第9章 M-Vの衛星たち

カテゴリーメニュー

本格的な科学観測を開始

2005年7月10日に打ち上げられたX線天文衛星「すざく」は、8月中旬にファーストライトを迎えた後、本格的な科学観測を開始した。7月末からの観測機器の立ち上げの途中で、X線マイクロカロリメータ(XRS)による観測が不可能になるという不具合が発生したものの、硬X線検出器(HXD)とX線CCDカメラ(XIS)は順調に観測を続けており、期待通りの性能を発揮している。

XISは全部で4台搭載されており、うち1台には新開発の背面照射型CCDが採用されている。この背面照射型CCDは、約1keV以下のX線に対する分解能が優れており、超軟X線の観測に威力を発揮する。一方、HXDは硬X線から軟ガンマ線領域を受け持つ検出器で、バックグラウンドを極限まで落とすことで、硬X線領域で過去最高の感度を達成している。「すざく」はこの2種類の観測装置により、0.2~600keVという広帯域を一挙に観測することができる。

「すざく」は、8月後半から本格的な科学観測を開始した。X線からガンマ線の波長域ではチャンドラ、ニュートン、RXTE、インテグラルなどの衛星が活躍中で、これらの衛星との協力と競争のもと、優れた成果を出す必要がある。それには、XISとHXDの特長を踏まえた上で、その性能を極限まで引き出す観測を行わなければならない。一方、打上げ前に準備した観測計画はXRSに特化しており、使えない。そこで、科学ワーキンググループで急きょ観測天体の選定を行うことになった。ところがメンバーは全世界に散らばっている。そこで、電子メールと電話会議システムを駆使し、迅速かつ濃厚な議論を重ねて観測天体の選定を行っている。時には、天体選定から観測までが1週間という慌ただしいスケジュールになったものの、そこは練達の運用チームに支えられて、順調に観測が続けられている。

9月末までには約30天体を観測し、その種類は通常の星から銀河団にまで及んでいる。「すざく」の第一の特長は、硬X線領域での過去最高の感度である。それを活かした観測の手始めとして、活動銀河核の「ケンタウルス座A」(HXDのファーストライト)やNGC4945、MCG-6-30-15、NGC2110などを観測し、硬X線放射をきれいにとらえている。一方、硬X線観測で初めて見えてくるのが非熱的宇宙である。そこで「すざく」は、宇宙線加速の現場である超新星残骸SN1006やRX J1713.7-3949の入念な観測を行った。硬X線観測は電子の加速効率を探るために不可欠である。

「すざく」の第二の特長は、軟X線領域でのXISの優れた特性である。特に、大きく広がった天体は、チャンドラやニュートン搭載の分散型の分光器が使えないため、「すざく」の格好のターゲットになる。この特長が遺憾なく発揮されたのが、黄道北極の観測である。銀河系内には100万度程度の高温の星間ガスが至る所に存在し、我々の太陽系もそのようなガスの中にいると考えられている。ほかに明るい天体の少ない黄道北極を観測することで、このようなプラズマからの輝線放射を直接とらえることができる。「すざく」は、高階電離した炭素や酸素からの輝線を明確に検出しており、その性能の高さを実証した。

読みかけのページとして記録する

「読みかけのページとして記録する」について