第9章 M-Vの衛星たち

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「ようこう」から「ひので」へ

9月23日6時36分、轟音とともにM-Vロケット7号機が飛び立った。34m管制室には秒を刻む餅原義孝の声のみが聞こえている。皆の眼はロケットの飛跡を示すスクリーンにくぎ付けだ。「ロケットは正常に飛翔しております」「第2段の点火、確認しております」のアナウンス。この段階で衛星班にできることは何もない。ノーズフェアリング開頭、第2段の分離、第3段の点火が確認され、正常な飛翔が続いている。しかし、内之浦から追跡できるのはここまでだ。

X+14分(打上げ14分後)、オーストラリアの新GNパース局に衛星が入感した。予定通り、衛星は太陽捕捉姿勢制御を開始している。直後、太陽センサが太陽を視野にとらえ、衛星は太陽円盤の中心に向かってぐんぐんと姿勢を変えていく。X+17分、太陽捕捉完了。電源オンの状態にあるすべての機器の正常動作も確認された。緊張の中にも、一瞬、ほっとした空気が流れる。しかし、まだまだだ。

X+45分。新GNサンチャゴ局に入感。太陽電池パドルが展開状態にあり、発生電力も正常値であることが分かった。ここで衛星主任の小杉が思わず「万歳」の声をあげた。「打上げが成功したときからが衛星の正念場」「一喜一憂せずに全力を」「無用の発声・私語を慎むこと」(打上げオペレーションについての衛星主任制定の注意事項)を、衛星主任自らが放棄してしまった瞬間である。「ひので」は、このようにまったく危なげなしに誕生し、地球を半周しないうちに親の力を借りずに自給自足の基礎を確立した。

打上げから3週間が過ぎた。「ひので」はこの間、近地点高度を上げ、高度約680kmの太陽同期極軌道へと移された。ほうっておいても10年間は太陽同期が保たれる理想の軌道だ。姿勢制御系のチェックもほぼ完了した。

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