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遂にイトカワに「到着」、ランデブー

「はやぶさ」搭載カメラで小惑星イトカワを撮影

「はやぶさ」搭載カメラで小惑星イトカワを撮影

「はやぶさ」の撮影した小惑星イトカワの形状

「はやぶさ」の撮影した小惑星イトカワの形状

2005年8月28日、「はやぶさ」は、軌道設計上の「到着」を果たした。2年4ヶ月に及ぶイオンエンジンの往路運転が終了し、イトカワからの距離4,800kmにまで近づいたのである。この時点でのイトカワとの相対速度は約9m/s(時速32km)。ここから先は、2液式化学推進のエンジンを使って徐々に速度を落としながら、さらにイトカワに接近するが、地球からイトカワまでの惑星間軌道の観点から見れば、すでに「到着」である。

7月の合の期間を終えた「はやぶさ」は、停止させていたイオンエンジンの運転を再開し、イトカワへのラストスパートに入った。スパートといっても、加速ではなく減速するのであるが。この間、搭載している星姿勢計(スタートラッカー)でイトカワを撮影し、その画像からイトカワの見える方向を求め、地上からの電波による計測と複合させて、「はやぶさ」探査機の精密な軌道決定が行われた。

隼という鳥は、獲物に向かって舞い降りるとき、いったん空中で停止するのだろうか。この宇宙の「はやぶさ」は、ターゲットである小惑星イトカワの手前20kmで静止を試み、それに成功した。ランデブーの開始だ。

そして9月12日10時00分(日本時間)、「はやぶさ」は、搭載している化学エンジンによる微小な軌道修正を繰り返し、秒速7cm相当の減速噴射を行って、イトカワとの初のランデブーをなしとげたのである。

今回のランデブーは徐々に減速を行ったため、接近してからの飛行には長時間を要した。8月末には時速36kmという自動車並みの速度で、イトカワから3,500km地点にあった。それから2週間、まるで台風の接近のようにしずしずと近づいていった。軌道修正も数十cm/秒ずつという精密さで、最後の静止化の軌道修正も7cm/秒を逆噴射させて、0.25mm/秒というほぼ完ぺきな静止条件を実現している。NASAのDeep Impact探査機は世界中の関心を集めたが、飛行制御の精密さでは「はやぶさ」の方がはるかに勝っており、大いに誇りたいものである。

目標天体を自家薬籠中のものにしたという点で、「はやぶさ」は前半の「技術上の最大の関門を突破した」ということができる。ここに地球から3億kmの彼方で高度な航法が完璧に達成され、日本は惑星探査における国際水準に到達した。

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