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オーロラカメラによる初期観測

打上げ後1ヶ月間で、三軸姿勢制御への移行や理学観測機器の初期運用・観測が行われた。まず、9月20日の南極上空でのオーロラカメラ観測では、活発に動くオーロラの2波長同時観測に成功した。写真はこのときに得られたオーロラの合成画像で、酸素原子の緑色と窒素分子の赤色の発光分布を示している。

画像の範囲は南北約420km、東西約130kmで、空間分解能は約2kmである。明るく曲がりくねった緑色オーロラと暗い赤色オーロラが、ほぼ同じ場所に見られる。合成画像が不連続に見えるのは、オーロラの動きのためである。赤色画像に顕著な明るいパッチ状の広がりは、月明かりに照らされた雲である。動画にすると赤色オーロラ帯に沿って小さな渦構造が移動するのが分かるが、このような特徴はオーロラ発光現象解明の鍵となる。

南極昭和基地からのオーロラ同時観測結果と比較するため、「れいめい」衛星は10月中旬まで南極上空でオーロラを撮影した。先述した8月30日から31日にかけてのオーロラカメラの初運用は、CCDの駆動回路やコマンド・データ通信回路に電源を投入して観測モードを指定するだけなので、数分間で完了した。しかし、放電事故の危険を伴う高圧電源を複数台用いているオーロラ粒子センサーの初期立ち上げには3週間以上が必要だった。出力電圧を、10分間の可視運用のたびに徐々に上昇させていく慎重な運用が行われた結果、ようやく10月下旬になって定常的な観測が可能になった。

こうして北極圏上空において三軸姿勢制御により観測機器の視野を制御し、地上に展開されている電離圏レーダー・光学観測網との共同研究に挑んでいった。

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