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M-Vロケット8号機搭載のサブぺイロード実験

M-Vロケット8号機には、サブぺイロードとして、ソーラーセイル膜面展開実験ペイロード(SSP)と、東京工業大学の超小型衛星(Cute-1.7+APD)が搭載された。

【ソーラーセイル膜面展開実験】

M-V-8号機サブペイロードのソーラーセイル

M-V-8号機サブペイロードのソーラーセイル

SSP(Solar-sail Sub Payload)は、直径10m超級の扇子型セイルの展開制御(セイルをゆっくり展開する)を目的とするサブペイロード実験モジュールである。独自のテレメータを持ち、実験データ(カメラ画像、モーター回転数、Cuteステータス)の受信をオーストラリア上空(実験中)およびアラスカ上空(実験後)で行った。しかし、受信時にトラブルがあり、受信データの質が非常に悪くなってしまった。結局、実験中の画像は再生できず、実験後の画像が何とか数枚再生できたという状況であった。実験中のモーター回転数のデータなどから、セイルは途中までは展開したものの、何らかの原因で停止したと考えられた。

【超小型衛星】

M-V-8号機サブペイロードのCute

M-V-8号機サブペイロードのCute

東工大サブペイロードは、東工大によって開発された2番目の超小型衛星であるCute-1.7+APDと分離機構システムから成り、軌道上運用に成功した。この衛星は10cm×10cm×20cmの小容積、質量3.6kgと小粒ではあるが、工学ミッションに加え、理学ミッションとして超小型高性能APD(Avalanche Photo Diode)センサを搭載するなど、高集積多機能を実現した。ただし軌道寿命延長のため、2003年に打ち上げられた1機目のCUTE-Iより重くしてある。

Cute-1.7+APDは、日本上空を朝5時ごろと夕方5時ごろに、毎日それぞれ2回程度通過した。アマチュア無線の混信が大変ひどい中で運用を行っており、何回かの危機を乗り越えたが、受信用制御機器に不具合が生じた。とはいえAPDセンサの粒子カウントのための基本機能や、2台の携帯情報端末(PDA)、USB入出力などの基本バス機器の機能を確認でき、貴重な軌道上データを継続して取得した。

大学の一研究室が設計思想のまったく異なる超小型衛星を2機開発し、独自の地上局によって同時運用するという成果に対して、アマチュア衛星通信協会AMSATから次のようなオスカーの称号と連番が2機の衛星に付与され、両衛星は歴代のアマチュア衛星の仲間入りを果たした。

CUBESAT-OSCAR-55(CO-55):CUTE-I

CUBESAT-OSCAR-56(CO-56):Cute-1.7+APD

超小型衛星は、宇宙工学の実践的教育、先端科学技術の早期軌道上実証、新しい宇宙ビジネス手段として期待されている。

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