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飛翔後の解析(2)なぜ姿勢が異常になったのか

第1段ノズル周辺の温度計測データを見ると、打上げ後52秒辺りから異常な温度上昇が始まっており、特にある特定の位相の箇所での温度上昇がかなり急激だったことを示している。これらのことは、第1段モータノズル周辺での異変が、その位相付近で52秒辺りから生じたことを示唆している。

M-V-4号機に搭載されたカメラにより飛翔中に撮影したビデオ画像を見ると、時折ロケット噴炎中に小さな異物が噴出されるのが認められ、特に約25秒、38.5秒、41.5秒に著しい。この著しい異物の吐き出し時刻と同期して、モータ内圧測定値がわずかに急減している。特に41.5秒の減少量は小さくなく、その後回復することなく75秒の1・2段分離に至っている。機体加速度計測データも同時刻に急減、第1段モータの内圧と推力が連動して予測値より急減していたことを示す。このことは燃焼室に穴が空いて燃焼ガスが噴出したか、ノズルスロートの有効径が増大したかのどちらかであることを意味するが、この時点ではノズル周辺の温度が上昇を始めていないことと、この時刻に大きな姿勢変動が認められないことから、スロート・インサート(グラファイト製)が破損・脱落してスロートの有効径が増大したものと考えるのが妥当である。

内圧カーブにおける計測値の予測値からの逸脱と、搭載カメラによる異物の吐き出し記録から、スロートインサートの破損によるスロート径の拡大は段階的に進行していったものと思われる。温度計測データ等と併せ考えるに、スロートインサートが大きく破損したと考えられる41.5秒以降、耐熱性が劣化した状態で高温の燃焼ガス流にさらされていたスロート近傍が焼損し、51.6秒に高温ガスがノズル側面に漏れ始め、ノズル周辺の搭載機器等を順次焼損したために、姿勢制御系も機能を失ったものと考えられる。

打上げの翌日(2月11日)、発射点の近くで質感がグラファイトに似た小破片約70個が見つかった。偏光顕微鏡による検査等から、これらの破片はノズル・インサートのグラファイトであると結論した。ノズル・インサートの破壊は発射直後から始まっていたのである。

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