• 前のページに戻る

有効口径8mアンテナの開発

「はるか/MUSES-B」アンテナ展開1

「はるか/MUSES-B」アンテナ展開1

「はるか/MUSES-B」アンテナ展開2

「はるか/MUSES-B」アンテナ展開2

「はるか/MUSES-B」アンテナ展開3

「はるか/MUSES-B」アンテナ展開3

「はるか/MUSES-B」アンテナ展開4

「はるか/MUSES-B」アンテナ展開4

世界で初めて軌道上で展開に成功した8mアンテナの開発は、大変難しい局面を何度も乗り越えなければならなかった。このアンテナ開発は、プロジェクトマネージャーの廣澤春任のもと、高野忠、名取通弘の両者が担当した。実際の設計・製作は三菱電機(株)と日本飛行機(株)で、三菱電機の責任者の三好一雄は、大変苦労した点を次のように語っている。

──このアンテナは三浦公亮先生の考案されたケーブルテンショントラス構造というものを使用しています。形状近似誤差を小さくするため、1辺20cmほどの三角形状のケーブルで金属メッシュの反射面を支持しており、ケーブル総数は約6,000本になります。これらがすべて理想的な長さででき、伸び縮みがなければ、各接点は理論通りの鏡面を形成します。しかし、現実には製造誤差があり、張力の変化、温度変化などによる伸び縮みで、理想鏡面からのずれが生じます。そのため、背面側のケーブル(これもテンショントラス構造)と接続しているタイケーブルの長さを調節することにより、鏡面精度を追い込む構造となっています。(中略)テンショントラス系は剛性の高い太いケーブルを高精度の治具を用いてできるだけ正確に作り、強固で精度の高い構造を作ります。この間を細分化するケーブルネット系は剛性の低いもので、タイケーブルによる調整が容易にできるようにし、張力も低く抑えてマストにかかる力を低減しました。このような複合構造とすることにより、何とかケーブル系で鏡面を形成する解を見いだしました。このアンテナの最大の難関はケーブル絡み防止でした。見るからに絡みそうな多数のケーブルを持つアンテナをどうやって無事展開させるか、いろいろアイデアは出たものの結局は試験をやりながら試行錯誤で作り出しました。そして、(1)跳ね上げ式保持プレート、(2)背面メッシュ、(3)順次展開方式、を採用しました。──(三好)

また、高野は、次のようにも語っている。

──ちょうど設計時期に、NASAから木星探査機Galileoが打ち上げられましたが、その展開アンテナは簡単な機構にもかかわらず、展開できませんでした。──(高野)

その原因は骨組みにケーブルが絡まったためで、その教訓から、

──伸展マストに、収縮機構を入れました。開発の初期に、展開モデルを作り、展開試験をしたところ、ケーブルが引っ掛かるため10回やっても一度も成功しませんでしたが、この収縮機構の対策のおかげで、ほぼ100%開くようになりました。その段階で公開して見ていただいたわけですが、大部分の人の反応は「これは、開かないのではないか」でした。そのくらい難しいことだったのです。──(高野)

カテゴリーメニュー