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飛翔後の解析(1)制御の履歴

打上げの瞬間から内之浦局で見えなくなるまでの、第1段~第3段の姿勢制御履歴を見ると、第1段の後期を除いて正常で、第2、3段の姿勢制御は完璧に行われている。打上げ後250秒からは、テレメータの受信状態を良好に維持する目的であらかじめ計画されたロールの90度回転が実行されており、また打上げ後360秒からは、衛星を分離する前の準備である姿勢の180度反転も正常に行われている。

第1段のピッチ、ヨー、ロール角の履歴によれば、打上げ後約55秒を経過した時点からピッチ角が急激に増大しており、やや遅れてヨー角がやはり急激に発散し、さらに、ロール角も一方向に回転している。ピッチ角は2度にわたって非常に高い角度を示し、最高では水平面から120度にまで達している。ヨー角は東方向から南向きに50度を越える角度まで増大し、ロール角も第2段点火前には100度に達している。

第1段のピッチ、ヨー制御は、ノズルの向きを変えて推力の方向を変えることにより行なわれる。その制御履歴によれば、打上げ後55秒付近以降で急激なピッチ姿勢誤差の拡大を抑えるべく制御指令がノズル駆動系に出されているが、それに先立つ53.7秒にノズル振れ角を計測する系への電源が断となり、実際にはノズルは駆動せず、この秒時でピッチ方向の制御が失われていたと考えられる。この状態は75秒(第2段点火)まで持続した。また、ヨー方向姿勢制御は打上げ後70秒付近まで機能はしていたが、ピッチ方向の過大な誤差のために有効に機能していない。ピッチ制御が失われた時点での高度は23km付近で、ヨー制御が失われたのは36km付近だった。

 この極端な姿勢異常が、第1段による獲得速度の不足を招いた。第2段も第3段もこのロケットのシステムで可能な限り頑張ったが、その速度不足を回復しきれなかったのである。

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