第9章 M-Vの衛星たち

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感慨

──「のぞみ」の開発では様々な局面で多くの仲間と喜びと悲しみを共にした。そのうちのどれもがこのページを飾るに相応しいものであろう。M-Vは始めて我々が手にした惑星への手段であった。しかし、本当に惑星に探査機を送るとなると何もかもが新しい事だらけで簡単なことではなかった。

最大の難関は重量問題であった。地球軌道では2トン近い衛星を打ち上げることの出来るM-Vでも惑星軌道まででは約500kg、さらに周回衛星にしようとすると燃料を除いた半分の250kg程度で全てを作らなければならない。この中には、火星での軌道投入用の推進ロケット、遠距離の通信用パラボラなど地球周りの衛星では必要ない仕掛けも含む必要がある。

鶴田浩一郎「のぞみ」衛星主任

鶴田浩一郎「のぞみ」衛星主任

「のぞみ」開発当時の衛星技術は日米共同で開発したジオテイル衛星に代表されるが、その作り方を採用すると観測機を何も載せなくても火星到着が不可能であることが誰の目にも明らかであった。幸い、地上の技術は軽薄短小の波に乗って小型化、軽量化が主流となっていた。「のぞみ」の開発チームはこの流れから使える技術を取り出し大胆に採用していった。さらに、サブシステム間の壁を出来るだけ取り除き全体として衛星を軽くする道を模索した。結果的には略、完璧な観測機を備えた探査機となったが残念ながら火星でその実力を示すことは出来なかった。──(鶴田浩一郎)

──バルブでは“アイタッ、閉まった”と“シマッタ、開いた”の故障の二つがありますが、「のぞみ」のRCSで生じた故障は前者でした。このバルブは米国からの輸入品でしたが、衛星重量軽減の極めて厳しい要求から特注仕様のもので、故障もその部分から生じたものでした。それまでの宇宙研衛星計画においては、計画開始時に重量マージンを殆ど持たないのが常でした。そして設計が進むにつれ、知恵を出し合っては軽量化の努力を続け、なんとか打ち上げまでもって行くという状態が多かったのですが、「のぞみ」の場合、結果的には無理があったと言わざるを得ないと思っています。この教訓もあって、今後の衛星計画では当初に或る程度の重量マージンを持つことを義務付けるようになったのは、当然と言えば当然ですが、大きな進歩だと思います。──(上杉邦憲)

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