第9章 M-Vの衛星たち

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ASTRO-EII計画の概要

ASTRO-EII衛星には、X線天文衛星「あすか」の性能をさらに向上させたXRTが5台搭載され、それらのうち4台の焦点面にはX線CCDカメラ(XIS)が、1台の焦点面には高精度XRSが置かれる。これらの観測装置は、およそ0.5~10keVのエネルギー領域のX線を観測する。また、これらと同時に各X線源からの硬X線(およそ10~700keVのエネルギー領域)をこれまでにない感度で観測する硬X線検出器(HXD)が搭載される。これらの観測装置によりASTRO-EII衛星は広い波長帯にわたって優れた分光性能を持つ大型高性能X線天文台となる。中でもXRSは、画期的に優れたX線分光能力を持ち、宇宙の各種天体に存在する高温プラズマ中の、鉄などの重元素が放射する輝線の微細構造が、初めて観測されることとなる。その結果、ブラックホールのまわりの物質の運動や、銀河団の形成・進化といった問題に、新しい光を当てることができるようになるだろう。
これと平行して、XISとHXDを用い、広い波長域にわたった精度の高い連続スペクトルを得ることができ、宇宙での粒子加速の現場をとらえたり、遠方の銀河の中心に隠れたブラックホールを見いだしたりすることも期待される。

これらの観測装置の開発は、日米の多くの大学・研究機関の研究者によって行われている。また、その科学的成果を最大限に引き出すための日米欧の研究者による科学作業グループの活動も進められている。無事軌道に投入された暁には、世界の研究者に開かれた国際軌道X線天文台として一般公募観測を順次行われていく。

ヨーロッパのX線天文衛星XMM-Newton

ヨーロッパのX線天文衛星XMM-Newton

アメリカのX線天文衛星Chandra

アメリカのX線天文衛星Chandra
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ASTRO-EIIのエネルギー分解能は、ESAのXMM-NewtonやNASAのChandraと比べて20倍も高くなる。XMM-NewtonとChandraでは決定的なことが言えない現象についても、ASTRO-EIIならばクリアにできる。X線を観測することで、宇宙の非常に激しい現象を見ることができる。ASTRO-EIIは、ダイナミックに動いている宇宙の姿を、これまでにない精度で見せてくれるはずである。銀河団を満たしている高温のガスがどのように分布し動いているのか、ダークマターの運動、さらにはブラックホールに物質が落ちていく様子も見えてくるだろう。

X線天文学のパイオニアであるブルーノ・ロッシは、「自然は人間よりもはるかに想像力豊かである」と言った。確かに、自然には我々の想像をはるかに超えたものが潜んでいる。性能を高めたり、まったく新しい装置を開発することで、今までに見えなかったものを見て、世の中をひっくり返す。ASTRO-EIIグループの奮闘はつづく。

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