第9章 M-Vの衛星たち

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イオンエンジンで地球スウィングバイ

2003年7月。「はやぶさ」は、その後も順調に飛行を続け、7月はじめには、地球との距離が0.1AU(天文単位)を超えた。

打上げ後の1年余りの間、太陽を周回する軌道を順調に飛翔し、イオンエンジンを使用し離心率を拡大して、相当する軌道エネルギーの蓄積を行ってきた「はやぶさ」は、2004年5月19日に再び地球に接近し、地球スウィングバイを行った。小惑星イトカワへ向かう新たな軌道に入った。イオンエンジンによる加速を地球スウィングバイと組み合わせて用いる技法は、構想、実施の両面で、世界で初めての技術実証である。

「はやぶさ」は5月19日15時22分(日本時間)に東太平洋上空(西経141度、南緯3.5度)にて地球に最接近し、その時点での高度は約3,700kmだった。「はやぶさ」は、この直後から約30分間の日陰に突入したが、わが国で初めて搭載されたリチウムイオン二次電池の機能も良好で、翌20日の日本時間2時30分からの運用でも搭載各部の機器の動作も完全で、正常に動作していることが確認された。

「はやぶさ」の軌道はスウィングバイ後にあらためて推定されており、その結果によれば、スウィングバイ時の目標点からの誤差はおよそ1km程度にとどまり、非常に厳密に実施されたことが裏付けられた。支援を行ったカリフォルニア工科大学のジェット推進研究所の担当部局は、この正確な誘導と航法の運用に賞賛を惜しまなかった。また、最新の軌道決定結果に基づいた小惑星イトカワへの飛行計画案の作成にも成功し、5月28日より本格的なイオンエンジンの運転を再開した。

小惑星到着までの「はやぶさ」の軌道

小惑星到着までの「はやぶさ」の軌道

「はやぶさ」の見た地球

「はやぶさ」の見た地球

なお、地球接近時に近赤外線分光器の較正観測が行われたほか、探査機に搭載された光学航法カメラ( 小惑星との相対位置検出、ならびに科学観測を行うためのセンサー)による月および地球画像の取得にも成功した。

小惑星イトカワに到着する直前には、地球から見た「はやぶさ」の方向が、太陽に非常に接近する。もちろん、実際に「はやぶさ」が太陽に近づいているわけではなく、地球から見て太陽の反対側に位置するだけだが、このような現象を「合」と呼ぶ。「はやぶさ」は、合のときにも今後のミッションにとって重要なデータを取得しており、合を乗り切リ、いよいよ小惑星への最終アプローチに入った。

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