第9章 M-Vの衛星たち

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ASTRO-Eという衛星

2000年1~2月期の打上げをめざし、わが国第5番目のX線天文衛星ASTRO-Eのフライトモデルの製作がまもなく始められる時期を迎えていた。製作に先立ち、衛星構体や搭載される大型観測装置の構造設計に間違いのないことを確認するため、1997年5月末から構造モデル試験が、相模原キャンパスを中心に行われた。

ASTRO-E衛星は、総重量約1,650kg、衛星の直径約1.9m、打上げ状態での衛星の高さ約5m(軌道上では、X線望遠鏡の鏡筒部がさらに約1.5m伸展される)という宇宙研にとってこれまでにない大型の衛星である。

さらに、ASTRO-Eには、X線マイクロカロリメーターと呼ばれる新しいX線検出器が世界ではじめて宇宙X線観測用に搭載される(日米協力で製作)。これは、天体からやってくるX線光子一つ一つのエネルギー(波長)を、マイナス273℃(絶対温度約0.1度)に冷やした検出器への熱入力(X線受光素子の温度変化)として測るもので、これまでのX線検出器の波長分解能を格段に上回る、画期的なX線検出器である。しかしながら、そのX線受光部をたいへんな低温に冷却する必要があるため、大量の冷媒(固体ネオンと液体ヘリウム)を必要とし、総重量約400kgの大型観測装置である。考えてみれば、この装置だけで「あすか」の総重量に匹敵するのだから、大変なものである。

音響試験中のASTRO-E(宇宙開発事業団筑波宇宙センター)

音響試験中のASTRO-E(宇宙開発事業団筑波宇宙センター)

これら大型の衛星構体や伸展式光学ベンチ、X線マイクロカロリメーター用の大型デュワーは、それぞれ振動・衝撃条件に対しぎりぎりの設計になっている。6月20日までに三軸方向の振動試験のうちのX軸・Z軸方向の試験と衝撃試験を無事終了し、6月30日からは、宇宙開発事業団筑波宇宙センターの設備を借りて音響試験と続き、このまま何とか無事に構造モデル試験を切り抜けてほしいと、祈るような気持ちの毎日が続いた。

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