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電波誘導の管制官が見た「発射から軌道まで」

ロケットが発射された後の管制はコントロールセンターにて行われる。 各センターからのデータ表示や指令電話での情報により、飛翔保安コマンドと電波誘導コマンドを利用して管制が行われると共に、場内放送で飛翔状況が実験班に知らせられる。

発射1分前にコントローラがスタート、M-3SII-1より12年ぶりの新型ロケット実験である。室内に緊張が漂い、少し前まで冗談に最大動圧(+37秒)まで正常に飛べば80点、2段点火までもてば成功との話が脳裏をかすめる。15秒前にSPGG点火、息づまる様な時間が経過して遂に1段点火、コントロールでは低い窓から轟音とともに明るい光が差し込んできた。

内之浦より尾翼の無い初めてのロケットが打ち上げられた歴史的瞬間だ。少し遅れて天井よりバリバリと言う振動が伝わって来た。頼りの新精測レーダが追尾しているのでまず安心。軌道は正常でノミナルの上を示している。搭載テレビが力強く加速するロケットの映像を送って来ている。

1段軌道が予定に近いため2段修正RGコマンドは僅かにピッチ0.4度、ヨー0.1度、75秒。最大の難関ファイア・イン・ザ・ホールは、テレメータがノイズで姿勢情報が十分で無かったが、H-V図上のロケット点が順調に加速しており、軌道正常。197秒開頭がテレビで美しくモニタできた。2段分離より3段点火までのテレビ画像も完璧で、3段燃焼正常、勝浦局、小笠原局からも正常に受信中との連絡が入る。

334秒スピン開始10秒後にキックモータ点火、2万kmまで上がる速度まで加速、実験班より安堵の声が上がるがまだ早い、内之浦より見えない衛星分離を勝浦局にて確認との連絡にてやっと安心。

──小田先生や松尾先生の笑顔が見える。不思議に人と話をしたくないが川口先生の顔が頭に浮かんだ、なぜか涙が止まらない。さあデータをかき集めて衛星軌道を計算し、第一可視に備えよう!── (前田行雄)

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