第9章 M-Vの衛星たち

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衛星の準備(1)噛合せ試験

1997年末から衛星本体の設計製作に入ったASTRO-Eは、フライト品の製作に伴い、1998年7月1日からは一次噛合せが始まった。

ASTRO-Eは、当時計画されていたM-Vによる衛星としては最も大きい衛星で、M-Vのフェアリングの中をほぼ一杯に占有する。この状態では直径約2m、高さ約5mの八角柱の形に身を縮めて収まっているが、軌道上では約5.4m×2.5mの太陽電池パネルを拡げ、さらに、全長も伸ばして6.5mになって初めて、搭載したX線望遠鏡は所定の焦点距離を確保することになる。

この手法は、基本的には現在活躍中の「あすか」衛星と同じだが、一回り大きくなっており、更にその構造、機構は大幅に改修され、性能も向上した。そのため、クリーンルーム内での組立や試験には、作業用の巨大な足場が必要になり、建築現場を思わせるような高さ8mを超えるパイプで組み立てた足場が衛星を取り囲んでいる。足場の最高部は殆ど3階建てのビルの屋上くらいの高さになり、かなり危険な作業になる。

ASTRO-E伸展マストの試験

最初は側面パネルを水平に展開して各搭載機器の組付け等を行っていたが、9月にはほぼ全体がまとまった形でお目見えした。

一次噛合せ試験は10月に入って山場を迎え、16日、17日に衛星上での観測機器の動作試験、これに引続き19日から21日、30日と11月2日に有線、無線での衛星の総合動作試験が行なわれた。総合動作試験は主に搭載機器相互の電気的干渉を調べることを目的としている。試験は大禍なく終了し、有意義なデータを取得することができた。

また11月2日には噛合せ試験を通じて「最大の呼び物」である光学ベンチの伸展試験が実施され、関係者の心配をよそに大勢の見学者で賑わった。ASTRO-EのX線望遠鏡は全部で5台ある。いずれも焦点距離が4~5mと長いため、打上げ時には光学ベンチを縮めておいて衛星をロケットのフェアリング内に収める。試験では、ほぼ予定通りの約4分で 1.5mの伸展をすることができた。

こうして7月に始まったASTRO-E衛星の一次噛合せ試験は11月10日でようやく終了し、その後は各機器を持ち帰って問題点の検討を行なうことになった。気の抜けない日々が続くが、2000年初頭の打上げに向けて、そしてその後のScientific Paradiseを夢に見つつ、関係者は一丸となって奮闘を続けた。

「あすか」衛星の時は3ヵ月だった試験期間も、大型化したASTRO-E衛星では4ヵ月強という長丁場となった。それでも決して余裕があるわけではなく(重量比からすれば4倍の12ヵ月くらいほしいところである)、土曜日や休日を返上することもしばしばである。またフライト品の初めての噛合せということもあって、様々な不具合や検討事項も生じた。原因究明やスケジュールの遅れを取り戻すために夜遅くまで作業が続く日もあるが、このときの試験ですべての不具合を出し尽くしてしまうように、注意深く作業が進められた。

ASTRO-E衛星の製作は日米国際協力で進められており、試験にはNASAゴダード宇宙飛行センター(GSFC)やマサチューセッツ工科大学(MIT)の科学者、技術者も参加している。現場では日米の文化や生活習慣の違いを越え、衛星を成功させるという共通の目標に向かってともに全力投球していったのである。

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