第9章 M-Vの衛星たち

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現れたイトカワの素顔

「はやぶさ」は9月12日に小惑星イトカワの太陽側20kmのところに到達し、さらに9月30日にはホームポジション(イトカワから7km)に到達した。搭載観測機器である多波長撮像カメラ(AMICA)、近赤外分光器、蛍光X線分光器、レーザー高度計(LIDAR)はすべて正常に動作し、順調な観測が続いている。10月8日からは、イトカワに対する相対位置をいろいろ変えながら観測を続け、イトカワまでの最短距離約3km付近での近接観測も実施している。イトカワがその素顔をフレッシュに現したのである。

自転周期12.1時間、自転軸下向き(地球とは反対向き、南極が上側)という結果は、打上げ前の地上観測による予想とほぼ一致していたが、とらえられたイトカワの姿は驚くべきものであった。写真で見るように、何となく二つのブロックがくっついているような形をしており、大きさは540m×270m×210mである。

これまでNASAの探査機によって撮像された10km以上の小惑星では、表面はレゴリスと呼ばれる厚い砂や礫(れき)の層で覆われており、のっぺりとした中にクレーターやところどころに岩が散見されるというものであった。

ところが、今回のイトカワの表面はこれらとはまったく異なる多様な状態を見せており、表面は大きな岩だらけで、部分的にレゴリス地域が見られる。普通レゴリスは、隕石などが外部から高速度で衝突して放出した破片のうち、脱出速度以下の破片を再集積させてできると考えられている。イトカワのように非常に小さな天体では、衝突で出された細かい破片(一般的に細かい破片ほど高速度で放出される)を表面にとどめておくのが難しく、その結果、厚いレゴリス層が発達しにくく、表面の岩や石が露出しているのだろう。ということで、今回初めてレゴリスで覆われてしまっていない天体の表面を見たことになる。

10月末には、観測データを持ち寄り検討して、小惑星試料採取のための候補地点として、岩だらけの中でも比較的平坦な2ヶ所が提案された。いよいよ11月にはサンプル採取のために表面に向かって降下し、このミッションにとって最もエキサイティングな瞬間を迎えることとなる。

「はやぶさ」の撮影したイトカワの表面

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