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探査ロボット「ミネルバ」の放出

放出されたミネルバが撮影した「はやぶさ」の太陽電池パドル

放出されたミネルバが撮影した「はやぶさ」の太陽電池パドル

放出されたミネルバ(白い点)

放出されたミネルバ(白い点)

11月12日15時8分、地上局から「ミネルバ」放出の指令が発せられた。それが「はやぶさ」に届くまでには約16分かかる。その「固唾を呑んで見守るしかない」16分間、「ミネルバ」の関係者の一部は「はやぶさ」の動きに注目した。

「はやぶさ」は、イトカワの表面との接触を避けるため、あまり近づきすぎたら、降下から上昇に転じるようプログラムされていた。「はやぶさ」の動きを見ながら、タイミングを選んで「ミネルバ」放出の指令を送ったものの、それが「はやぶさ」に届くまでの「魔の16分間」は、ひたすら祈るしか手のない時間であった。

「はやぶさ」が上昇に転じた。そして確かに放出したことを告げる電波が、15時40分に地上に届いた。その16分前、つまり15時24分に、「ミネルバ」は「はやぶさ」から旅立ったことが確認されたのである。ただし、イトカワの表面には着地できなかった。

放出後、「はやぶさ」と「ミネルバ」の通信は18時間にわたって確保され、「ミネルバ」は回転しながら離れていく過程で、「はやぶさ」本体の太陽電池をカラー撮影することに成功した。

「ミネルバ」による表面探査は、全体から見れば、アメリカが提供するはずだったミニローバーが、予算がないため撤退した後を受けて急遽登場した「おまけのピンチヒッター」だったとはいえ、多くの人の苦労がしみこんだ芸術的な作品だった。今は、工学的に一定の成果をあげたことを喜ぶべきなのだろう。着地を第一に考えれば何とかなっただろうが、今回のオペレーションとしては、「はやぶさ」本体の危機を守るために「ミネルバ」はその小さな体を張ったということである。

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