第9章 M-Vの衛星たち

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PLANET-Bの目指すもの

アメリカのMars PathfinderやMars Global Surveyerなどほんとんどの外国の火星探査機は、地形、地質、気象、生命といった分野の観測を目的としている。火星からの隕石に生命の痕跡が有った/無かったの騒ぎや有人の火星探査をアメリカが計画しているおかげで、火星に対する上述の分野の観測がますます盛んになりそうだが、日本が計画した火星ミッションPLANET-Bはそれとはちょっと異なり「火星上層大気と太陽風との相互作用」に主眼をおいた。

過去の火星探査でPLANET-Bと似たような観測を行ったのは、軌道投入後2か月ほどで、フォボスへの接近中に死んでしまった旧ソ連のPhobos-2ぐらいだろう。これは短期間で死んでしまったのだが、それまでの間に火星の夜側で火星から大量の酸素が流れ出ていることを発見した。どの程度の酸素が流出しているかというと、Phobos-2で観測されたものが常時全域にわたって流れ出しているとすると、なんと1億年で現在の火星大気中の酸素が無くなってしまうほどの量なのである。地面からの供給があるので、本当に1億年で火星大気中の酸素が全て無くなってしまう訳ではないが、大変な量である事には違いない。この観測がPLANET-Bを計画する動機の一つになっている。つまり、本当にこれほど大量の酸素が流れ出ているのだろうか、またどういったメカニズムが働いて酸素が流れ出しているのだろうかをきちんと調べようという訳である。

酸素流出の問題は火星の夜側の話だが、全球にわたる問題としては、火星の固有磁場の問題がある。火星は地球とは異なり、惑星固有の磁場が無いか、または有っても大変小さなものである。この固有磁場の有無をきちんと調べるためには、太陽風の中の磁場の影響から逃れるために、なるべく低い高度で観測をすることが望まれるし、火星全域での磁場を測定するためには軌道は極軌道に近い事が望まれる。

また、火星では固有磁場が殆どないために、昼間側に於いては地球では磁場によって遮られている太陽風が直接上層大気にぶつかっている。そしてこの太陽風との相互作用によって火星の大気が剥ぎ取られていく。この大気の散逸の過程もPLANET-Bの観測で明らかにしたい事柄の一つである。これら、火星大気の散逸の過程を調べることで、火星大気の進化の歴史に対する手がかりが得られる。

こうした事柄などを解明するために、PLANET-Bには14個の科学観測器(そのうち、4個が海外機器でアメリカ、カナダ、スウェーデン、ドイツからそれぞれ1つずつ供給されている)が搭載された。

PLANET-Bではこれだけの観測器を積んでいくために徹底した軽量化が行われた。その結果、5mのマスト及び1本25mのワイヤアンテナ4本の駆動機構なども含めて、観測器の全重量は35kgと従来の衛星に比べて驚異的に軽い観測機器重量となった。観測機器の数がPLANET-Bとほぼ同じであるGEOTAIL衛星の観測機器重量は180kg程度だったから、いかに軽くなったかが分かる。これらの観測器を総動員して、色々な未知の問題を調べていく訳だが、個々の問題により観測に適した軌道は異なる。それらをなるべく満足し、なおかつ日陰の時間がバッテリー容量から許容される範囲内に入るように、PLANET-Bでは近火点高度を一番低い時で150km程度に、遠火点高度は15Rm(1Rmは火星の半径で約3,400km)程度に、初期の軌道傾斜角は75度という準極軌道の長楕円軌道に設計した。

「のぞみ/PLANET-B」組立て

「のぞみ/PLANET-B」搭載観測機器

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