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ロケットも衛星も初物ならではの難しさ

「はるか」は、新規開発したM-Vロケットの1号機に搭載する衛星であり、しかもその衛星にも多くの新規開発機器が搭載されているわけなので、それには大変な困難が伴い、多くの関係者の苦労があった。

特に衛星設計上苦労したのは、一つはロケット打上げの機械環境条件が確定しない中での開発という点であり、もう一つは衛星がちょうどバンアレン帯の中に潜り込み、放射線環境が非常に厳しい軌道を周回するため、搭載機器の部品を放射線環境から守らなければならないことであった。

衛星システム設計を担当した日本電気の中川栄治は、次のように語っている。

──機械環境条件はM-3SIIロケットの条件、M-Vロケット地上燃焼試験時の試験データをもとに決められ、それに基づいて構造解析を行い、STM(構造試験モデル)を製作し、STMをランダム試験に供し、衛星の各パネルの応答レベルをもとに各機器の試験レベルを決めました。また実際に遭遇する音響環境に対しても心配になり、STMを当時の宇宙開発事業団の筑波宇宙センターに持っていき、音響試験をしました。その結果を反映して各機器に対する振動レベルを決めたのですが、この振動レベルが過大にならないよう、衛星内の機器の搭載個所を13の部分に分けて、各場所での振動レベルを規定しました。

一方、放射線環境から部品を守るために、機器の筐体の肉厚を一般的なものより厚くしなければなりません。これをすべての機器に一律に適用してしまうと、衛星の重量が増加してしまい、思うように衛星設計ができなくなるおそれがありました。このような事態に陥らないように、機器の中の一つの部品に対する放射線のシールドをその機器のみの筐体だけでなく、衛星の構造材料を含めた周りのすべての機器がシールドとして作用するという考え方を採用しました。放射線シールドモデルを構築し、各機器の筐体の肉厚を変化させて放射線解析を行い、すべての対象となる部品の耐放射線要求を満たして、機器全体の重量が最小になるよう、各機器の筐体の肉厚を設定したのです。その結果、筐体の厚さが面ごとに異なる機器も出てきました。──(中川)

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