国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所(ISAS)の職員及び名誉教授が、令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞」及び「若手科学者賞」を受賞いたしました。
科学技術分野の文部科学大臣表彰は、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、我が国の科学技術の水準の向上に寄与することを目的として、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者を表彰するものです。
表彰式は2025年4月15日に文部科学省にて行われました。
【科学技術賞(研究部門)】
業績名:小型月着陸実証機SLIMおよびその精密月着陸に関する研究
受賞者:澤井 秀次郎 JAXA宇宙科学研究所副所長/宇宙飛翔工学研究系教授
福田 盛介 JAXA宇宙科学研究所宇宙機応用工学研究系教授
坂井 真一郎 JAXA宇宙科学研究所宇宙機応用工学研究系教授
表彰式にて、左から福田教授、坂井教授 (クレジット:JAXA)
受賞者(代表)コメント
この受賞は組織の垣根を越えてチームメンバーが一丸となって達成したものです。
計画全体の研究をとりまとめる立場としてチームを代表して、このような素晴らしい賞を頂くことができ、大変光栄に思います。この受賞が我が国の科学研究レベルの向上とともに大型研究におけるチームプレーの重要性を改めて強く認識する機会になったと確信しております。
具体的に、20年以上にわたる長年の研究活動は、明治大学の鎌田先生、東京大学の高玉先生、横浜国立大学の上野*・樋口先生、東京都立大学の北薗・小島先生、九州大学の外本先生、静岡大学の能見先生はじめ、多くの大学研究者の方々とも一緒に進めてきたものです。大学院生として関連研究に係わり、その後大学の研究者となられた方もいらっしゃいます。この場を借りて改めて感謝と敬意を表すると共に、今後もこうして一緒に新しい挑戦に取り組めることを願っています。(澤井 秀次郎)
*2025年4月現在の所属はJAXA
業績名:フォトルミネッセンスに よる半導体結晶評価の研究
受賞者:田島 道夫 JAXA宇宙科学研究所名誉教授
表彰式にて、田島名誉教授 (クレジット:JAXA)
受賞者コメント
このたびは、名誉ある科学技術賞を賜り、大変光栄に存じます。
これまで一貫して取り組んできたフォトルミネッセンスによる半導体評価の研究成果が、このような形で認められたことを心より嬉しく思います。本研究を支えてくださった多くの皆さまに深く感謝申し上げます。今後も、本手法のさらなる可能性を追究するとともに、次世代への技術継承にも力を注いでまいります。
業績名:小惑星リュウグウ探査と 太陽系化学進化に関する先鋭的研究
受賞者:橘 省吾 JAXA宇宙科学研究所 太陽系科学研究系特任教授
橘省吾特任教授 (写真提供:本人)
受賞者コメント
太陽系がどのように誕生し、多彩な惑星を形成するまで至ったのかを知りたいと研究してきました。「はやぶさ2」のリュウグウでのサンプル採取に関わり、また、持ち帰られたサンプルを世界中の皆さんと分析できたのは貴重な経験でした。探査で得られた成果をその先に繋げようともがいている部分まで含めて、評価していただき、大変嬉しく思っています。これからも前進したいと思います。
【科学技術賞(科学技術振興部門)】
業績名:低重力環境下での粉粒体 挙動観測による国際宇宙 探査への貢献
受賞者:大槻 真嗣 JAXA宇宙科学研究所宇宙機応用工学研究系 准教授
尾崎 伸吾 横浜国立大学大学院工学研究院システム の創生部門 教授
石上 玄也 慶應義塾大学理工学部機械工学科 教授
前田 孝雄 東京農工大学大学院工学研究院先端機械 システム部門 准教授
須藤 真琢 JAXA有人宇宙技術部門 主任研究開発員
表彰式にて、左から前田准教授、須藤主任研究開発員、大槻准教授、石上教授、尾崎教授 (クレジット:JAXA)
受賞者(代表)コメント
このたびは、栄誉ある賞を賜り光栄に存じます。Hourglassミッションは,宇宙科学研究所と有人宇宙技術部門との連携により行なわれました。国際宇宙ステーション(ISS)にある日本の実験モジュール「きぼう」内の人工重力発生装置(CBEF)に粉粒体(地上自然砂や模擬レゴリス)が入った砂時計を持ち込み、約60時間弱の観測を行うことができました。そして、自然重力と軌道上人工重力の違いを明らかにし、粉粒体の流動特性の重力依存性、粉粒体の付着力の発現を確認しました。これらにより、地上より低い人工重力環境下にある粉粒体のふるまいの答え合わせが可能なデータセットを取得しただけでなく、直近の探査機設計へ貢献し、ISSを皮切りとした民間主導による地球低軌道の「探査」における価値を見出すことができました。最後になりましたが,宇宙科学研究所ならびに有人宇宙技術部門の多くの関係者の皆様ならびに私達と共に当活動を支えてくださった関連企業の皆様に深く感謝申し上げます。(大槻 真嗣)
【科学技術賞(理解増進部門)】
業績名:月着陸機会を活かした宇宙科学/技術に関する理解増進
受賞者:河野 太郎 JAXA経営企画部企画課 主任
後藤 健太 JAXA研究開発部門第二 研究ユニット 研究開発員
横田 健太朗 JAXA研究開発部門第一 研究ユニット 研究開発員
村上 豪 JAXA宇宙科学研究所太陽系科学研究系 助教
表彰式にて、左から河野主任、後藤研究開発員、横田研究開発員、村上助教 (クレジット:JAXA)
受賞者(代表)コメント
栄誉ある文部科学大臣表彰(科学技術賞 理解増進部門)をいただき大変光栄に思います。今回は活動を代表して我々が賞をいただきましたが、SLIMプロジェクト関係者やプロジェクト外からもご協力いただいた多くの皆様、JAXA外のメーカー各社の皆様のご支援があってこその受賞だと考えております。
SLIMプロジェクトにおいては、その意義・価値や得られる成果を広くご理解いただくために講演などの一般向け広報活動のほか、XなどのSNS(ソーシャルメディア)やYouTube、ライブ配信を用いたタイムリーな情報発信を推進してきました。また、単なる情報拡散でなく、支持層の拡大や科学教育・啓蒙にもつながる取組みとすることを心掛け、特に興味関心の高まる瞬間に迅速に効果的な情報を示すことができるような体制と仕組みづくりについても留意しながら活動を進めてきました。
これからも宇宙開発や宇宙探査の魅力をダイレクトにお伝えし、ゆくゆくは多くの方にプレイヤーとしても参加したくなるようなすそ野を広げる発信について、研究開発活動と合わせて取り組んでいきます。(河野 太郎)
【若手科学者賞】
業績名:始原的小惑星の探査と観測による太陽系進化に関する研究
受賞者:巽 瑛理 JAXA宇宙科学研究所太陽系科学研究系 特任助教
表彰式にて、巽特任助教 (クレジット:JAXA)
受賞者コメント
母と父の背中を追いかけて踏み込んだ研究者の道ですが、賞をいただいたことで肩を並べられたように感じて嬉しいです。母がかつてそうしたように、わたしも娘に目標、興味を探究する姿を見せていけたらと思います。この研究の多くの部分ははやぶさ2プロジェクトの成果です。はやぶさ2のプロジェクトの皆さまとこれまでご指導賜った方々に感謝します。