最新ニュース: LiteBIRDチームは、科学的意義を損なうことなく、より実現しやすいミッションの形を探る活動を約1年かけて進めてきました。その進捗確認が宇宙科学研究所で行われ、次の段階へ進むことになりました。今後は公式プロジェクト化を目指して、国際チームが一丸となって検討をさらに加速していきます。
LiteBIRDは、「宇宙はどのように始まったのか」という謎の解明を主目的とするミッションです。今までの数ある観測によってビッグバン宇宙論が確立されましたが、宇宙が高温の火の玉になる前に何があったのかはわかっていません。現在考えられている仮説の最有力候補が、佐藤勝彦氏らが提唱するインフレーション宇宙論です。この仮説では、宇宙は誕生時に急激な加速膨張を引き起こしたとされていますが、その仮説を検証し詳細を明らかにすることが、本ミッションに課せられた使命です。
ビッグバン宇宙論の確立に大きな役割を果たしたのが、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)です。これは、「宇宙の晴れ上がり」(宇宙誕生後38万年) 時に形成された光で、宇宙のあらゆる方向から同じようにやってきます。そのCMBに見られる微かな濃淡を使い、当時の宇宙の様子を精密に調べることが可能になりました。では、さらに昔の宇宙はどうでしょうか? CMBがつくられる前の宇宙はプラズマ状態になっていたため、「光」では直接見通すことができません。そこで、本ミッションでは、原始重力波を使います。原始重力波は空間の歪みの伝搬で、CMBの偏光パターンに痕跡を残します。そのわずかな痕跡を調べることで、インフレーション宇宙論を検証します。
LiteBIRD計画では、広視野のミリ波偏光望遠鏡を搭載し、3年間観測を行います。約4000個の超伝導検出器を用いて、また熱雑音源となる望遠鏡の壁全部を5 Kまで冷却することで、高感度観測を実現します。また、12帯域で観測を行うことにより、高精度でCMBとそれ以外の電波を選り分けることができます。スキャン方法も独特です。独楽の歳差運動のような複雑な動きで、広い空をくまなくスキャンします。
本ミッションは、JAXA主導の下、イギリス、イタリア、オランダ、スイス、スペイン、ドイツ、ノルウェー、フランスの欧州各国とカナダの宇宙開発機関・研究機関と共に検討が進められており、国内では、東京大学、岡山大学等と共に開発が進められています。2032年度の打ち上げを目指しています。
2024-10-09 高エネルギー加速器研究機構 (KEK) が担当する機器の開発を担うことを断念するとの判断を受け、計画の見直し(reformation)検討を今後約1年かけて実施し、継続検討の可否を判断することが、宇宙科学・探査小委員会に報告されました。(https://www8.cao.go.jp/space/comittee/27-kagaku/kagaku-dai63/siryou2.pdf)
2025-09-25 計画の見直し(reformation)検討の評価が行われ、来年夏の「ミッション定義審査」を目指して検討を継続・加速することが認められました。引き続き、国内外のLiteBIRDチームが一丸となって検討を進めていきます。

