所長より
現在の国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所はこれまでに、組織や構成員・所掌課題をScrap & Buildしながら、飛行機→ロケット→高層大気観測→天文衛星→惑星探査へといつも新たな領域へ挑戦してきました。今後目指すべき中心的課題は、「宇宙の始まりと銀河から惑星に至る構造形成の解明」と「太陽系と生命の起源の解明」です。地球大気に遮蔽・埋没されてしまう波長域:γ線・X線・紫外線、赤外線・マイクロ波を宇宙から直接的に観測し、地上望遠鏡と連携して137億年の宇宙の歴史に迫ります。太陽系宇宙を構成する多数の天体に直接的に探査機を送り込み、その場観測やサンプルリターンといった手法を駆使して、46億年の太陽系宇宙の進化を探求します。これら課題を解決するために「宇宙機及び宇宙輸送システムに関わる宇宙工学技術の革新」を目指します。
大規模で精巧な宇宙事業を実行するに当たり、大学共同利用システムの機能を発揮させて、Bottom Up Processとして全国大学からの意見と知識・技術・人材を糾合します。そのためこそ、宇宙科学研究所が要となって理工一体となった自由闊達な議論を活性化し、ミッション立案に向けて総意の集約を行います。その次に宇宙科学研究所が最終責任を負いながらも参加組織との責任分界点を明確にした上で、全体として性能を満たし統率の取れたシステム開発と宇宙運用を行い、科学成果の最大化を図ります。
この10年間で飛躍的に国際協働が深化しました。宇宙科学研究所のこれまでの成果に世界中から敬意と尊敬が表され、十分な信用を勝ち取る事ができました。その結果、国際的共同事業への参画を請われています。より複雑性の高くより巨大でより深遠な宇宙に到達するような国際共同ミッションや国際宇宙探査に、日本の叡智を供出することで、一国では実施し得ないBig Scienceを主体的戦略的に分担し、結実を目指します。
宇宙科学研究所の成果を社会活動へ還元する施策を実行します。宇宙活動で取得された科学データを積極的に公開し、自由に利用できる体制と機構を構築します。さらに、社会活動に親和性の高い工学技術を地上実装することにも努力します。
科学振興・技術研究開発・宇宙活動・組織運営に多くの課題が山積する中、職員一丸となって世界にSolutionを示すことができるはずです。宇宙科学研究所の活動にご理解をいただき、引き続きご指導ご鞭撻を賜れば幸いです。
2018年4月
JAXA 宇宙科学研究所長
國中 均
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