将来計画HiZ-GUNDAM

X線と赤外線の二つの「眼」を持ち、太古の宇宙のガンマ線バーストをとらえて宇宙の最初期にできた天体の探査に挑む計画。中性子星合体にともなう極限的な物理現象の解明や重力波天体の電磁波同定などマルチメッセンジャー天文学にも貢献する。

赤外線位置天文観測衛星 JASMINE 国際紫外線天文衛星 WSO-UV

宇宙のはじまりのころ、最初期の星や銀河はどのように誕生したのでしょうか?我々は、その姿を捉えることができるのでしょうか?理論的研究からは、宇宙で最初の世代と呼べる星は、宇宙の晴れ上がりから約2億年がたった頃 (赤方偏移 z~20) に誕生したと考えられています。太陽の数百倍の質量を持つ明るい恒星も生まれたはずですが、これらの星のひとつひとつの輝きをそのままに観測することは、現代の最高の望遠鏡をもってしても不可能です。

ガンマ線バーストは1052 ergものエネルギーを伴う宇宙最大の爆発現象です。数秒から数十秒の短時間ガンマ線で輝き、その直後には、X線や近赤外線、可視光線などでも非常に明るく輝く残光現象を伴います。ガンマ線バーストは、極超新星などと呼ばれる大質量の星の終焉時の爆発に関係していると考えられています。ひとつひとつの星の輝きは見ることはできなくても、寿命の短い大質量星の終焉で生じるガンマ線バースト現象やその残光を捉えることができれば、宇宙最初期の星の存在を知ることができます。宇宙年齢が約8億年より若い時代の高赤方偏移の天体は、視線上にある銀河間の中性水素ガスによる吸収の効果をうけるため、見かけ上、近赤外線で明るく可視光で暗い天体として観測されるという特徴があります。ガンマ線バーストの兆候をとらえたら素早く近赤外線で残光を観測することで、宇宙の最初の世代と呼べる星の存在を、ガンマ線バーストをトリガーとして、とらえることができます。

また、ガンマ線バーストを太古の宇宙を照らすスポットライトだと考えることもできます。宇宙の晴れ上がり時に一度は中性になった宇宙の水素ガスが、その後の数億年間の間に完全に電離されるという、宇宙史における大きなイヴェントがありました(宇宙の再電離)。宇宙初期ガンマ線バーストをスポットライトとすると、手前にある銀河間ガスの電離状態を調べることができ、宇宙の再電離現象が時間と共にどのように進んだのかを知ることもできます。このためには、ガンマ線バーストが発生してすぐの残光が明るく輝くうちに、これを検出し、宇宙初期の現象であることを特定したうえで、巨大望遠鏡などを動員した詳細な残光スペクトル観測を行う必要があります。

HiZ-GUNDAM計画は、太古の宇宙のガンマ線バースト現象を多数検出し、宇宙最初期の星の誕生と終焉、そしてその時代の銀河間ガスの物理状態を解明することをめざす計画です。ガンマ線バースト現象をとらえる広視野のX線モニタと残光をいち早く観測する赤外線望遠鏡を同架した衛星により、ガンマ線バースト検出と残光観測による対応天体の速やかな同定と赤方偏移の測定を行います。またその情報を広く発信することにより世界の望遠鏡がタイムリーに追究観測を行うことを可能にします。

ガンマ線バーストの中には、増光時間が短いショート・バーストと呼ばれる天体もありますが、これらは中性子星など高密度の天体が融合する際の爆発現象にも強い関わりがあり、重力波源になるとも考えられます。HiZ-GUNDAMによる観測を重力波観測とむすびつけることで、爆発現象の物理そのものを解明することにも貢献します。