S-520型ロケットは、K-9M、K-10型ロケットに替わる単段式ロケットとして宇宙科学研究所が開発しました。直径520mm、打上げ時の重量約2,100kgで、高度約300kmに到達する能力を有しています。高性能推薬および最適推力プログラムの採用、構造の軽量化などによって、単段式ながらそれまでの主力観測ロケットであったK-9Mの2倍のペイロード能力が実現されました。
推力プログラミング、飛翔安定方式にはS-310の経験を生かし、1980年初めの初飛行以来計4機の打上げを経て安定した性能を示すに至りました。単段化によるオペレーションの簡素化、第1段落下に伴う保安上の問題の解消、打上げ費用の低減等の利点から今後も活躍が期待されています。推薬はMロケット第1段と同じブタジエン系コンポジット推薬の直填。推力曲線はS-310と同様に2段推力型で、ペリメータの大きい前部クローバ型断面部が初期の高推力レベルを、後部円筒型断面部が後半の低推力レベルを保証する設計になっています。ノズル開口比は8と比較的大きく実効比推力の向上が図られています。
チェンバー材料には、22号機までは超高張力鋼HT-140が採用されていましたが、23号機以降はS-310と同じクロムモリブデン鋼が採用されています。尾翼は前縁がチタン合金、平行部はアルミハニカムをコアとしGFRP/CFRPの積層を表板とするサンドイッチ構造が採用されており、軽量かつ耐熱性をもたせてあります。CFRP製のノーズフェアリング内に科学観測機器が、底部の平行部に基本計器が収納されていますが、オプションとして基本計器とモーター間に姿勢制御モジュールや回収モジュールを搭載することができます。
S-520 ロケットで行われた最近の観測
打上げ日 | ミッション |
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2024年11月14日 | 液体推進剤回転デトネーションエンジンシステム飛行実証実験 |
2023年12月2日 | 先進的宇宙工学技術の実証実験 |
2022年8月11日 | 電離圏擾乱発生時の電子密度鉛直・水平構造観測 |
2021年7月27日 | 深宇宙探査用デトネーションエンジンシステムの実証実験 |
2015年9月11日 | 酸化物系宇宙ダストの核生成過程の解明 |
2014年8月17日 | スポラディックE層空間構造の立体観測 |
2013年7月20日 | 電離圏大気中で発生している電磁気的相互作用と電離・中性大気相互作用の全容を明らかにする |
2012年12月17日 | 微小重力環境を利用した均質核形成実験 |
2012年1月12日 | 熱圏中性大気とプラズマの結合過程解明 |
2010年8月31日 | 電離層中におけるエレクトロダイナミックテザー(EDT)の基礎実験と微小重力環境下におけるテザーを用いたロボットの姿勢制御 |