国際学会で3つの賞を受賞!globalな研究室で培われた積極性と英語力
~33rd ISTS受賞インタビュー: 伊藤大智氏・Nishanth Pushparaj氏~

Nishanth Pushparaj氏(左)と伊藤大智氏(右)

2022年2月26日-3月4日に開催された33rd ISTS (International Symposium on Space Technology and Science)において、伊藤大智氏とNishanth Pushparaj氏がStudent Session Awardsを受賞しました!2人は、川勝康弘研究室に所属しており、同じプロジェクトに携わることもあるそうです。本記事では、受賞の感想や研究室での様子などを語っていただきました!

伊藤 大智(総合研究大学院大学物理科学研究科宇宙科学専攻/川勝康弘研 5年一貫制博士課程2年)
軌道部品接続法という手法の拡張により、軌道構築の効率化やフライバイの3次元的な軌道把握を可能にした研究で、33rd ISTSにおけるModi Memorial Jaya-Jayant Awardを受賞。

Nishanth Pushparaj(総合研究大学院大学物理科学研究科宇宙科学専攻/川勝康弘研 5年一貫制博士課程5年)
33rd ISTSで2つの賞を受賞。1つは、MMXプロジェクトにおける新たな遷移手法の開発というテーマでSPSS(Society for Promotion of Space Science) President Awardを受賞。もう1つは、MMXのための軌道最適化手法というテーマでBest Poster Award (1st Prize)を受賞。

軌道設計に携わろうと思ったきっかけは?

伊藤: 初めて宇宙に興味を持ったのは「はやぶさ」が帰還した時でした。中学校1年生だった僕は、宇宙から物が帰ってくるという出来事を目の当たりにして、それまで遠い存在に感じていた宇宙が地球と繋がっているんだと身近に感じたんです。「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーである川口淳一郎先生が軌道の研究をされていたことや、大学3年生時に拝聴した講演会で、川勝研究室の特任助教である尾崎直哉先生が語った軌道設計の美しさに感銘を受けて、軌道設計に携わることを決めました。惑星の位置関係や自転の影響など様々な要素を考慮しつつ、それらを繋ぎ合わせて一連の軌道を創り上げていく過程が、格好良いなと思いました。

Nishanth: ロケット打上げ場から20km程のところに家があったので、いつも打上げを見て育ちました。幼い頃は何をしているのか分かりませんでしたが、とにかくそれが興味を抱くきっかけでした。何が起きているのかを知りたくて航空宇宙工学を学びました。宇宙飛行士になりたいという思いもあったのですが、軌道設計には有人では行けない場所も含めてどこへでも行ける魅力がありました。ISASへ来た理由は、学生でもプロジェクトにつながる基礎研究に携わる機会を得られるからです。川勝研究室は日本人学生と外国人学生の人数バランスが良く、英語が話せる人も多いので、良い環境だと思いました。

今まで研究してきて、辛かったことはありますか?

伊藤: 解析系あるあるかなと思うんですが、プログラムが全然動かなくて苦しんだことはあります。コロナ禍で入学し、ちょうど研究室のエアコンが壊れた時期も重なり、少し隔離された部屋にいたので、先輩に相談しづらくて孤立感を募らせていた時期でもありましたね。あと、研究室の公用語が英語で、全てのコミュニケーションを英語で取らなければならないことが大変で、入学当初は憂鬱な時もありました。1年生の10月頃からNishanthと一緒の研究に携わることになって、話さざるを得ない状況になり、今ではそんな悩みはすっかり解消されています!Nishanthはお喋りが大好きで、英語でガンガン話しかけてくれるので聞く力や話す力がかなり磨かれました。ISTSという国際学会で自信を持って発表や質疑応答が出来たのも、普段の会話のおかげかなと思います。

Nishanth: 国際学会などに行くと、英語で質問も来ますし、そこから逃げずに対応しなければなりません。そういった時のために、後輩を助けてあげたいという思いで、沢山話しかけるようにしています。私も最初はシャイでしたが、先輩方に育てられたので。でも最近は、相手を解放せずにずっと喋り続けるので、ちょっと避けられはじめています(笑)

伊藤: Nishanthは研究で困っているところを見たことがないです。

Nishanth: 研究面で辛かったことはないです。プライベート面では、なかなか思うように帰国が出来ず落ち込むこともありますし、家族と離れて過ごす大変さはありますね。でも、ここが大好きなので「日本のどこが好き?」と聞かれたら「淵野辺(宇宙科学研究所相模原キャンパスの所在地)」と答えます!時差の関係もあって、家族と話すのは午後9時以降ですから、昼間はずっと研究室にいます。本当に年がら年中研究室にいましたね(笑)コロナ前は毎週水曜日に研究室メンバーでランチをして、川勝先生が研究以外の相談事も親身に聞いてくれました。学生にとっては本当によい環境だと思いますし、研究面での問題は一切ありません!

ISTSという国際学会の場はいかがでしたか?

伊藤: スライドの作り方は川勝先生が丁寧に指導してくれましたし、自分の英語が伝わることも分かっていたので、安心感を持って発表することが出来ました。Nishanthは全ての発表に対して質問をするくらい積極的で、僕にも「早く質問をするべきだ」ってメッセージを送ってきたので、刺激になりました。セッション後に、どういった意図で質問をしていたのか教えてくれたので、今後はそれを活かして積極的に質問していきたいです。

Nishanth: 総合研究大学院大学の新入生対象に開講されるフレッシュマンコースという集中講義で、沢山質問することが大切だと学びました。単純に自分が知りたいことについて尋ねることもありますが、聞いている側がどこまで理解できたかを発表者に示す意図もあります。自分なら、発表後に誰からも質問がなければ、誰にも理解されなかったのかなと不安になります。他の参加者も誰かの質問により理解が促されることもあります。質問が来たら、その分研究を促進させることができますし、頭の中で疑問を抱えるくらいならどんどん質問しようと思っています。

受賞を知ったときは?

インタビューの様子:左から藤田美季氏(インタビュアー)、伊藤大智氏、Nishanth Pushparaj氏、磯辺真純氏(通訳)。真ん中にあるのは受賞記念として贈られた宇宙兄弟ボトルのリポビタンD。

伊藤: 本当にびっくりしました!自分以外の発表を見て、高度な研究をしているなと差を感じさせられたものもあったので、期待せずに自宅でオンラインセレモニーを見ていたんですが、自分の名前が呼ばれて画面にも名前が映し出されて「え⁉」って思っていたら、Nishanthから「Congratulations!」とメッセージが来ました。ずっと「本当かな?」と半信半疑でしたが、運営側とメールのやり取りをしているうちに「本当に受賞しているんだな…。」と。川勝先生に報告した際、自信を持って英語で発表できたところや、質疑応答がしっかりしていたところが良かったんじゃないかと言われました。実は、直前に開催された修論発表で、質疑応答の議論が広がらなかった点を課題として指摘されていたので、ISTSでは積極的に議論しようという意気込みで臨んでいました。その辺りを評価していただけたのは、とても嬉しく思います。

Nishanth: 賞が欲しいとは思っていました。卒業も近いですし、長期間の研究で良い結果も出ていましたから。1つ目の受賞を確認して、嬉しい気持ちで外出していたら、伊藤くんから「2つ目受賞おめでとう!1st prizeだよ」とメッセージが来て2つ目の受賞を知りました(笑) びっくりしましたが、確かに2つ分の受賞メールが来ていました(笑)とても嬉しかったです。

今後の進路について

伊藤: まだ博士課程が3年間あるので、引き続き川勝研究室で学ぶことになります。その先についてまだ明確には決めていませんが、自分がこの分野に興味を持ったきっかけである深宇宙探査を推し進められる人になりたいです。軌道設計やミッション設計の知識はもちろん、あらゆる知識を用いて、自分の力で宇宙ミッションを進められるよう頑張りたいです。

Nishanth: 卒業後はポスドクとして九州大学へ行き、最近、英国ノッティンガム大学でのポジションを得たので、研究活動を続ける予定です。母国以外でこんなに長い期間を過ごしたのは淵野辺が初めてで、セカンドハウスみたいに思っているので、遠く離れた場所に行くのは少し寂しいですが、自分の研究室を持ちたいという夢へのステップとして頑張ります。人を教えることに興味がありますし、研究とは何かといったことも伝えられるとよいなと思います。

宇宙科学研究所 相模原キャンパスの桜の前で。真ん中は川勝研究室の船田美和子秘書。
宇宙科学研究所 相模原キャンパスの桜の前で。真ん中は川勝研究室の船田美和子秘書。

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