國中所長、平成30年度(第59回)東レ科学技術賞を受賞

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宇宙科学研究所所長 國中均が平成30年度(第59回)東レ科学技術賞を授与されました。

東レ科学技術賞は、公益財団法人東レ科学振興会が理学・工学・農学・薬学・医学(除・臨床医学)の分野で優れた業績をあげた方に対し、毎年2件前後授与しているものです。國中所長の受賞は「マイクロ波放電式イオンエンジンの研究開発と太陽系探査の推進」の業績が認められたものです。

「マイクロ波放電式イオンエンジン」は、マイクロ波で電子を加熱してキセノンのプラズマを生成する方式のイオンエンジンです。他の方式では一般的に熱電子放出源を用いますが、マイクロ波放電式イオンエンジンではそのような熱電子放出源が不要です。これにより、宇宙探査ミッションで不可欠な長寿命性・堅牢性を備えたイオンエンジンを製造できます。

國中所長はこの点に着目し、1980年代後半から主導的に研究開発を行い、世界で初めて宇宙用推進システムとして完成させることに成功しました。マイクロ波放電式イオンエンジンを主推進とする小惑星探査機「はやぶさ」は2003年に打ち上げられ、2005年に小惑星イトカワに到達し、2010年には地球帰還を果たしました。國中所長がリードして開発したイオンエンジンによって、地球~小惑星間往復航行を世界に先駆けて実現したのです。さらにこの成功によってサンプルリターンという新たな探査手法が確立されました。このように國中所長の研究は太陽系宇宙科学研究の進歩に貢献しました。

このイオンエンジンは、2014年に打ち上げられ2018年に小惑星リュウグウに到達した「はやぶさ2」にも採用され、さらに複数の将来宇宙計画への応用が検討されており、今後の日本の太陽系宇宙探査の根幹を支える技術となっています。

贈呈式には國中所長の他、イオンエンジンを開発した研究室の関係者数名が出席しました。受賞者挨拶で國中所長は宇宙研の「深宇宙船団」(ISASニュース1月号(No.454号)「所長年頭ご挨拶」参照)への意気込みを表明するだけでなく、三日後(2019年3月17日)に自身が出演する「はやぶさ2」のテレビ番組の宣伝も欠かさず会場を沸かせていました。

西山 和孝(にしやま かずたか)

授章式会場で

受賞式会場で。右からNEC/堀内 康男 氏、栗木 恭一 宇宙研名誉教授、國中所長、國中所長夫人、清水 幸夫 氏、細田 聡史 研究開発員、西山 和孝 准教授、山川 宏 JAXA理事長、船田美和子 秘書 Credit: ISAS/JAXA