元宇宙科学研究所教授の藤原顕氏が、今年7月に米国ニューメキシコのサンタフェで開催された国際隕石学会で、バリンジャーメダルを受賞しました。バリンジャーメダルは国際隕石学会の最高のメダルの一つで、衝突現象の科学で卓越した研究成果をあげた人に授賞されます。今回の受賞は日本人で初めてです。

藤原氏は、日本に惑星衝突実験分野を拓いた惑星実験物理学の先駆者です。1970年代から太陽系小天体への高速衝突過程を模擬するため、自ら衝突銃の開発も行い、岩石などへの高速弾丸衝突・破壊実験などを行ってきました。その実験から、衝突破片のサイズ、形状、速度、回転などを詳細に解析し、破片の速度分布やサイズ分布と衝突エネルギーの関係を明らかにしました。一連の研究結果から、米国研究者による「ラブルパイル天体」提案とは独立に、小惑星が瓦礫の寄せ集めとして再集積することを提唱しています。その後、小惑星探査機「はやぶさ」による小惑星イトカワの探査によって初めて、ラブルパイル天体の存在が証明されたのは2000年代に入ってからとなります。
1980年代には、その場観測用の衝突検出器や貫入型非破壊捕獲器の基礎実験を行い、日本の惑星塵計測のみならず海外の探査機搭載装置にも影響を与えました。1992年に宇宙科学研究所に着任後は、小惑星探査機「はやぶさ」の試料採取装置の創案と開発に中心的役割を果たしました。加えて、「はやぶさ」プロジェクトサイエンティストとして国内外の関連科学者を結集して初期科学成果をとりまとめ、採取試料の初期分析・保管設備の構想から設置申請までを担いました。

受賞式の様子