まだまだやりたいことばかり!?今後のビジョンが盛り沢山!
~文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞インタビュー:村上豪氏~

名前・所属

村上豪氏(宇宙科学研究所 太陽系科学研究系助教)が、令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞しました!評価された業績は、「惑星高層環境の分光撮像に関する研究」。大学院修士課程1年(2006年)から現在に至るまで一貫してこのテーマに取り組んできたという村上氏に、受賞の感想や研究について、語っていただきました!

受賞テーマの「惑星高層環境の分光撮像に関する研究」とは?

JAXAでは、実際に知りたい天体まで探査機を飛ばして、直接的にその場所で観測をしたり、そこにある粒子を測定したりする、「その場観測」という観測手法がよく使われますが、僕の研究では、目標天体から離れた場所で観測を行う「リモートセンシング」という観測手法を用いて、紫外線観測を行います。紫外線で太陽系天体を見ると、大気の上層部(惑星と宇宙空間の境目)にある原子やイオンが出す光を捉えることが出来ます。その観測データから、大気にどんな元素が多く存在しているか、宇宙空間の変化に対して大気がどんな応答をしているかといったことを研究しています。

今回の受賞では、「かぐや」「ひさき」「BepiColombo(ベピコロンボ)」と、これまでに携わった3つのプロジェクトでの業績や研究が評価されたと伺いました。

文部科学大臣表彰 記念メダル

大きなテーマで申請していたので、全部含めて評価していただけたのかなと思います。幸いなことに、多くのミッションに恵まれ、ミッション毎に見る天体は異なりますが、テーマはブレることなくこれまで研究を続けてきました。まだまだ途中ですけどね。観測装置の開発から、得られたデータで対象天体の大気や周辺環境を研究し、科学成果を出すところまで、全部やるというのが自分の研究スタイルです。

装置もご自身で開発されるんですね。

惑星分光観測衛星「ひさき」

開発は、やったらやっただけ結果になるという実感があります。上手くいかないことも結果の1つなので、無駄にはなりません。想定した結果にならないことの方が多いですが、トントン拍子で上手くいったものよりも、試行錯誤の結果こうすれば上手くいくと分かったものの方が確実なんですよ。苦労した分、良い結果が待っているというのは、開発屋冥利につきます。割と泥臭いことが好きなので、装置開発は自分の性分に合っていると思いますね。

この研究を始めるきっかけは?

月周回衛星「かぐや」(SELENE)

大学院修士課程1年(M1)で最初に携わったプロジェクトが「かぐや」で、参加したのが打上げ前年でした。開発も大詰めを迎えた頃、正にその只中で、打上げへ向けて数多くの課題を乗り越えていく経験をさせてもらいました。当時は本当に大変で、あっという間に大学院修士課程2年(M2)になり、気づいたら「かぐや」が打ち上がっていたという感じです。「かぐや」から最初のデータが降りてくるのを目の当たりにした瞬間は、めちゃめちゃ感動しましたね!「ついこの間までここにあったあいつが撮った画像が、今まさに、月から送られてきたのか…」と。その時「これはやめられん!」と、この道で開発をしながらデータをみる研究をしようと心に決めました。

研究を続けていて、嫌になったことは?

なくはないですけどね~(笑) でも、本当にもういいやと思ったことはないですね。もちろん大変なことはあるけど、根っこはやっぱり楽しいし、自分の好きなことを仕事にできているので幸せだと思います。基本はやっぱり楽しいですよ。

受賞を知った時の感想は?

親に報告した時に喜んでもらえたことが何より嬉しかったですね!応募の際に、これまでの業績を証明する資料を提出するんですが、少しでも多くと思って実家に何かないか尋ねたんです。そしたら、表彰状などの他にも、新聞記事をいくつか切り抜いて保管してくれていたんですよね。それらを写真で送ってもらって以来、「あれ、どうだった?」と気にしてくれていたので、いい報告ができて本当によかったです。学生の頃は、自分のことを自慢されるのが嫌だったんですけど、今はもう、自分にできる親孝行ってそれくらいしかないなと思っていて。親が自慢できる息子になろうと思って生きています。
本当に、親も含めて皆さんに支えられての受賞だなと思っています。実際にチーム仕事も多いですし、今回は皆さんの成果を代表して受け取っただけという気持ちです。

今後の研究についてお聞かせください。

国際水星探査計画「BepiColombo」

2025年に、BepiColomboがいよいよ水星に到達します。学生の頃から開発に携わっていて、僕の研究人生がそのまま乗っかっているみたいなミッションなので、すごく思い入れがあります。実はこれまでに水星の周回探査を実施したのは1機だけなんです。でも、そのたった1機の探査によって、水星がとても興味深い天体であることが分かりました。大気がない水星には、惑星誕生当時の情報が残されており、それらを通して、地球型惑星の成り立ちや環境を知ることができると期待しています。少ししか水星の情報が載っていない教科書が、2025年にはガラッと変わっているかもしれません!今回もよい成果を出して、また賞をもらいたいな(笑)

もう1つ、2032年打上げを目指して、LAPYUTAという紫外線宇宙望遠鏡を計画検討中です。生命存在可能性のある氷衛星では、内部海(地下に存在する海)から水が噴出する瞬間があります。実際に、有名なハッブル宇宙望遠鏡で、木星の衛星であるエウロパから水が噴出するのを観測した例があります。ただ、ハッブル宇宙望遠鏡のように観測対象が多く無数の観測提案が出される望遠鏡では、特定の天体や事象を継続して観測することが難しいんです。噴出のタイミングや量などの情報を得るためには、一定期間のモニタリングが必要となるので、日本がある程度の占有率を得られるよう、自分達の技術で望遠鏡を開発したいと思っています。LAPYUTAで開発技術を獲得した、さらにその先は、世界規模で進められる宇宙望遠鏡計画に参入できればよいなと考えています。
やりたいことはまだまだ沢山あります!自分の専門を活かしながら、面白いことを続けていきたいですね。

受賞情報

受賞年月日 受賞者 受賞内容
2022/04/20 村上 豪 令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞「惑星高層環境の分光撮像に関する研究」

関連リンク