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文部科学大臣表彰 若手科学者賞は、次世代を担う若手研究者の自立を促し、独創性の高い科学技術の発信に貢献するため、萌芽的な研究あるいは独創的視点に立った研究等、高い研究開発能力を示した若手研究者を表彰するものです。

受賞業績:小惑星探査機「はやぶさ2」を実現したイオンエンジンの研究の功績

受賞者:月﨑 竜童 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 助教
(はやぶさ2プロジェクトチーム併任)

受賞にあたり、前「はやぶさ2」プロジェクトマネージャでもある國中均所長からコメントをいただきました。

宇宙飛翔工学研究系所属の月崎竜童助教が、「小惑星探査機「はやぶさ2」を実現したイオンエンジンの研究」業績が認められ、令和3年度の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受けることとなり、たいへんに喜ばしく思います。

世界中の宇宙工学者が、心血を注ぎ「化学ロケット」を研究し、水平発射や弾道飛行させ、遂に宇宙進出を果たしました。そして今なお進化を続けています。燃料利用効率の高い(高比推力)「電気ロケット」の分野にても、世界と切磋琢磨しながら研究開発サイクルが繰り広げられてきました。宇宙科学研究所が研究開発してきた、欧米とは一線を画した独自技術:マイクロ波放電式イオンエンジンは、「はやぶさ」小惑星探査機の主推進として成果を上げ、世界初の小惑星サンプルリターンを実現しました。宇宙で得られた実験結果を糧に、新たな研究開発や改良を加えて、その次の宇宙実現を図るというPDCAサイクル(「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Action(改善)」の頭文字をとった業務の効率化を目指す方法の1つ)が、イオンエンジン領域にあっては直近の15年間に行われていたのです。この期間に、月崎竜童くんは光ファイバーとレーザー分光を組み合わせて空間分解能を有するプラズマ診断法を開発し、それを用いてマイクロ波放電式イオンエンジン内のプラズマ現象を解明して推力向上を達成しました。改良された第2世代イオンエンジンは「はやぶさ2」探査機に搭載され、2度目の小惑星サンプルリターンを成功させました。宇宙運用と同時並行で行われた研究開発では、さらに性能が向上し、第3世代イオンエンジンはDESTINY+探査機に応用される予定です。月崎竜童くんが宇宙工学の進歩だけでなく、宇宙科学研究所の事業に貢献されたことを高く評価するとともに深く感謝します。宇宙活動が拡大/大型化して研究開発費の膨張やPDCAサイクルの長期化する傾向にある中、たいへんに恵まれた環境であったことを指摘しておきます。

宇宙科学研究所は引き続き、1)宇宙科学アカデミア・コミュニティと共同して将来計画を立案し、2)宇宙理工学の研究基盤を維持発展させ、3)大学院教育や人材育成に寄与しながら、4)研究成果の発露として宇宙実現を目指します。

宇宙科学研究所長
國中 均

【月﨑竜童助教のコメント】
2007年当時「はやぶさ」地球帰還が絶望視されていた情況で、イオンエンジンの研究を始めました。以来、國中先生、西山先生のご指導を賜りながら、優秀で個性的な?!学生らと、JAXAと大学の制度の間で、現場で悪戦苦闘しながら研究を重ね、推力は1.5倍以上に改善しました。最近、生まれた息子に手を焼きつつも、行き詰まったら身体を動かし、「はやぶさ2」に続き「Destiny+」でも研究成果を宇宙実証していきたいと思います。