国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2023年5月11日(木)午前7時09分(日本標準時)に、はやぶさ型カプセルの遷音速・低速域における空力安定性評価のため、2023年オーストラリア気球実験のB23-02号機を、オーストラリア連邦北部準州アリススプリングス空港敷地内より放球しました。この気球は重量352kgの搭載機器を高度約39kmまで吊り下げることができる満膨張体積300,000m3(直径89m)の大型気球です。
気球は、放球約2時間後に高度約39kmで水平浮遊状態に入りました。2 時間弱の飛翔後、午前10時55分(日本時間)に指令電波により気球から降下させたカプセルはアリススプリングス東方約270kmの区域内に着地しました。気球及びカプセル以外の搭載機器部はさらに3時間余り飛翔した後、午後2時05分(日本時間)に指令電波により切り離され、アリススプリングス東方約500kmのクイーンランド州内に緩降下しました。
放球時の地上気象状況は、天候:晴れ、風速毎秒2m、気温:摂氏2度でした。
(参考)
JAXAでは日本国内での実施が困難な「長時間飛翔」、「陸上回収」、「南天観測」などをキーワードとする先進的な大型観測機器による宇宙科学研究を実現するために、オーストラリアでの気球実験を実施しています。
(実験の概要)
B23-02実験について:
「はやぶさ」や「はやぶさ2」に続き、火星衛星探査機(MMX)や彗星サンプルリターン計画(CAESAR)などのサンプルリターンミッションが計画されています。これらの計画におけるサンプルリターンカプセル(SRC)は「はやぶさ」のヘリテージを最大限活用するために「はやぶさ」相似形状をしており、「はやぶさ」型SRCのニーズが一層高まっています。SRCの開発を進め知見を深めるには遷音速・低音速域における飛行安定性やパラシュートの放出、開傘、減速性能に関するモデルの検証が必要になります。これらの要素は風洞などの地上試験で完全に再現することはできないため、自由飛行試験にて検証データを取得する必要があります。
本実験では、直径60cm の「はやぶさ」カプセル相似形状の実験機を気球高度から降下させ、遷音速~低速域の飛行挙動を取得するとともにパラシュートの開傘挙動の計測を実フライト環境で取得します。