国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2021年7月4日(日)午前5時30分に、極薄ペロブスカイト太陽電池の気球飛翔を目的として、2021年度気球実験のBS21-07号機を、連携協力拠点である大樹航空宇宙実験場より放球しました。この気球は満膨張時直径約11mのゴム気球で、毎分およそ360mの速度で上昇しました。
ゴム気球は、放球1時間21分後に大樹航空宇宙実験場南東約45kmの太平洋上において高度約31kmに達しました。供試体はパラシュートにより、大樹航空宇宙実験場南東約60kmの海上に緩降下しました。
放球時の地上気象状況は、天候:曇り、風速毎秒2m、気温:摂氏14度でした。
※実験概要
ペロブスカイト太陽電池は2009年に日本で開発された新しい太陽電池で、塗布により簡易・低コストに製造可能、光吸収係数が高いため発電層を薄くでき軽量化が可能、高効率化を実現可能などの優れた特徴を持つことから、次世代太陽電池として世界中で注目されています。特に、低温成膜や薄膜化が可能という特色を活かした薄膜フィルム上への成膜の可能性に着目し、20μm厚程度のフィルム、特にポリエチレンなどのフレキシブル性が高い材料への太陽電池成膜を実現できれば、気球の膜上発電、ウエアラブル発電、インフレータブル構造物上での発電など、革新的な発電が可能となり、イノベーションを起こすことができます。2019年度の第1回気球実験では、太陽電池基本特性の測定回路の骨格を構築するとともに、ガラス上成膜型ながらも高高度でのペロブスカイト太陽電池の特性データ取得に成功しました。現在、ガラスに代わり薄膜フィルム上にペロブスカイト太陽電池を成膜するべく、透明導電膜の最適化、フィルム耐熱条件に近い低温での成膜法、封止や電極取り出しの最適化などの技術開発を進めています。本実験では高レートの姿勢変動に対応すべく測定回路に改良を加えたうえで薄膜フィルム型ペロブスカイト太陽電池の飛翔実験を世界に先駆けて実施します。気球飛翔環境での評価を重ねることで気球膜上発電を実現し、気球実験の高度化への貢献を目指します。