国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2021年7月9日(金)午前3時33分に、高精度変位計測装置の実証を目的として、2021年度気球実験のB21-08号機を、連携協力拠点である大樹航空宇宙実験場より放球しました。この気球は満膨張体積15,000m3(直径約34m)の大型気球で、毎分およそ 240mの速度で上昇しました。

放球2時間7分後に大樹航空宇宙実験場東方約40kmの太平洋上において高度29kmに達したところで、水平浮遊状態に入りました。その後午前5時58分に指令電波により切り離した気球及び搭載機器部は、大樹航空宇宙実験場東方約30kmの海上に緩降下し、午前6時31分までに回収船によって回収されました。

放球時の地上気象状況は、天候:曇り、風速毎秒3 m、気温:摂氏13度でした。

※実験概要
大型望遠鏡など大型構造物を用いた科学観測の性能向上のためには、大型構造物の形状を 高精度で維持する技術が求められます。その実現に必須の基盤技術として、大型構造物の変形を高精度で計測する技術の開発を進めています。開発中の変位計測技術の有用性は地上試験では確かめられていますが、気球実験や衛星上での利用に向けては更なる実証が必要です。そこで、本実験では、メートル規模の計測対象構造物と計測機器をワンパッケージ化したものを搭載し、大気球の飛翔環境下で計測対象構造物の変形を熱膨張によって人為的に発生させ、その変位をレーザ変位計でマイクロメートルオーダーの精度で計測することで、変位計測システムの機能実証を目指します。この変位計測システムは、従来の変位計に比べて作動距離が長いため構造体に直接取り付けることが可能なほか、シンプルなシステム構成によって高信頼性、低コスト化が期待され、多様な実験への用途拡大が可能となります。

放球装置にセットされた搭載機器とJAXA格納庫内でガス充てんされた大気球B21-08号機

放球装置にセットされた搭載機器とJAXA格納庫内でガス充てんされた大気球B21-08号機
(クレジット:JAXA)