国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2025年7月8日(火)午前3時41分に、改良型クライオサンプラー性能試験を目的として、2025年度気球実験の大型気球B25-01号機を、連携協力拠点である大樹航空宇宙実験場より放球しました。この気球は満膨張体積100,000 m3(直径63 m)のポリエチレン気球で、毎分およそ250mの速度で上昇しました。

気球は、放球2時間21分後に大樹航空宇宙実験場東南東約50kmの太平洋上において高度35kmで水平浮遊状態に入りました。その後午前6時31分に指令電波により切り離された気球及び搭載機器部は、大樹航空宇宙実験場南東約40kmの海上に緩降下し、午前7時13分までに回収船によって回収されました。

なお、改良型クライオサンプラー性能実証試験に関しては、今回取得したデータを詳しく解析し、今後の研究を進めていきます。

放球時の地上気象状況は、天候:晴れ、風速毎秒1m、気温:摂氏21度でした。

※実験概要
成層圏大気のクライオサンプリング実験は、希薄な成層圏大気を大量に採取し大気中の様々な気体成分を分析することで、成層圏における大気化学過程や力学過程の研究を幅広く推進しています。1985年以降、25回の国内実験を行い、北極・南極・赤道域でも観測を重ねてきました。この研究では、大気成分の長期モニタリングが重要となるため、観測装置の高い信頼性を長期にわたって維持するとともに、技術革新によって人的・費用的に低コスト化を進める必要があります。特に、国内で使用してきた液体ヘリウムを用いる大型クライオ装置は、その高い信頼性のゆえに現在まで長期にわたって用いられてきましたが、搭載回路やモーター駆動バルブなど主要部品の老朽化に伴い、改修が必須となりました。本実験では、主要部品を新規開発品に換装した改良型クライオサンプラーの性能を実際の成層圏大気採取によって確認します。

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大気球B25-01号機の立ち上げ (クレジット:JAXA)

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放球直後の大気球B25-01号機 (クレジット:JAXA)

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飛翔後の気球システムの海上での回収をより向上するためドローンの活用検討を進めている(クレジット:JAXA)

以上