宇宙探査における地上局は、地球から何億キロメートルも離れた深宇宙を旅する探査機に指示を送り、探査機が撮影した画像や観測データを受信するための不可欠な通信インフラ設備です。
MMX総合システムは、探査機、地上システム、サンプルキュレーションとH3ロケットの各システムで構成され、うち地上システムは、追跡系システムと管制・ミッション運用システム、及びデータ解析・アーカイブシステム(MMX-DARS)で構成されています。
追跡系システムについて
MMXの追跡管制では、JAXAの深宇宙追跡地上局(美笹54m、臼田64m)を主局とし、海外機関地上局(NASA/JPL DSN及びESA ESTRACK)の深宇宙追跡ネットワークの支援を得て運用を実施します(図1)。
図1:MMX探査機と通信する深宇宙追跡地上局の一式。
これまでに国内局のRF 適合性試験*、接続設定試験及び海外機関地上局とのRF適合性試験について完了し、現在、残る接続設定試験を行っている状況です。
*無線通信機器が、各国の電波法や通信規格で定められた技術基準を満たしているかを検証する試験。
管制・ミッション運用システムの開発状況について
【計画立案サブシステム】
バス機器およびミッション機器の計画立案機能、特殊な場合の計画立案機能、地上局調整・周辺ツールの機器整備についてはほぼ開発を完了し、現在、ミッション機器について開発を担当している海外機関と連携して作業できる環境を整備しています。
【管制運用サブシステム】
探査機のリアルタイム運用に必要な機能一式であるデータ伝送、コマンド発行及び共通的テレメトリ監視、バス機器およびミッション機器固有のテレメトリ監視を、ISAS衛星標準のGSTOS(Generic Spacecraft Test and Operations Software)およびデータ配信装置をベースとしつつ、一部MMX固有要求に合わせた新規開発及び改修を行いました。
【軌道系サブシステム】
軌道決定機能については、既存ISAS深宇宙探査機用のものをベースにMMX固有機能の火星間の往復軌道、火星圏での運用軌道(フォボス観測軌道、デイモスフライバイ軌道)等についての付加改修を行いました。軌道計画機能については、MMX軌道設計解析作業と連携した新規開発を行いました。
【訓練用サブシステム】
探査機シミュレーションに利用する探査機総合シミュレータを中心として本番と同様の機能を持つコマンド発行やテレメトリ監視機能を整備しました。これを使って各運用訓練及びリハーサルを行うことができます。探査機の運用と独立して実施できます。シミュレータは、打上げ前に作成する運用手順と実運用で作成したコマンドの最終手順の検証にも使用する予定です。
管制室・運用室の整備状況について
JAXA 相模原キャンパス内で、「はやぶさ2 」以降もXRISM/ SLIM等、宇宙科学探査プロジェクトの数は増加しており、今後2030年代前半までの衛星計画に対応する後続プロジェクト(Solar-C/DESTINY+/JASMINE/LiteBIRD および将来衛星)などの長期的に管制室を利用するプロジェクトの増加に対応する必要がありました。新たに管制室・運用室を確保するため、2023年10月に管制室・運用室・見学室の部屋竣工、新規整備を行い、MMXは最初のユーザとして什器や回線・計算機など各種設備整備を進めてきました(図2)。
図2:MMX管制室・運用室・見学室の様子。
現在は、ISAS内の看板管制室として、多くの視察・見学が行われ、地上システム試験、MMX地上システム総合試験、総合システムEnd to End試験を実施しています。運用訓練についても順次開始しており、2026年打上げ後、約5年間の探査機システムの管制運用を行う予定です。運用室は、計画立案やデータ解析など、オフライン運用や訓練を行う予定です。
今後も、2026年度打上げから地球に帰還するまでの5年間、万全の態勢で各協力機関と連携し、開発・運用を継続させていきますので、応援していただければ幸いです。
【 ISASニュース 2026年6月号(No.543) 掲載】
