Credit: PLANET-C
「あかつき」に搭載されているUVI(紫外イメージャ)が波長283 nmと365 nmで撮影した画像を合成した疑似カラーのアニメーションです。UVIの波長283 nmは二酸化硫黄の吸収があり、太陽光が吸収されて暗く見えます。波長365 nmでは未知の化学物質の吸収があり、やはり暗く見えています。どちらの波長でも、高度約70 kmにあるおよそ雲頂付近を観測していると考えられています。この疑似カラーのアニメーションでは、283 nmを青、365 nmを赤、両者の混合を緑として着色しています。
撮影期間は2018年11月16日から12月7日の3週間です。左上隅の数字は観測時刻(世界時)、左下隅は金星から見た探査機方向と太陽方向がなす角度、右下隅は探査機の高度です。
このアニメーションからは色々なことを読みとれます。
まず、全体が雲におおわれていて、その下の地面が見えることはありません。この雲は硫酸でできています。そして、雲はどこでも右(東)から左(西)へと流れています。これは金星に「スーパーローテーション」という100 m/sに達する高速の風が吹いているためです。
このスーパーローテーションのメカニズムを調べることは「あかつき」の目的のひとつです。
アルファベットのVあるいはYの字を左側に倒したような巨大な暗部が、形を変えながら西向きに伝播しています。このようなパターンは金星以外では見られないもので、メカニズムはわかっていません。暗部の色は変動していて、赤みがかったところは硫酸の雲の材料となる二酸化硫黄が比較的多く、青みがかったところは金星特有の黄色っぽい色を作り出す未知の化学物質が比較的多くなっています。
中緯度には斜めの筋状の模様が見られます。雲が斜めに引き伸ばされて筋状のパターンが作られるようにも見えます。雲は赤道地方から北極、南極まで運ばれていくようですが、そのようなひとつながりの南北循環は地球では見られないものです。
大気が西向きに流れていくにつれて、南北に広がるような動きが見られるとともに、細かな粒状の雲塊が目立ってくるようです。雲塊は地球の積乱雲に似た印象を与えますが、その気象のしくみはわかっていません。
このような連続的なデータを計算機シミュレーションと融合させる「4次元データ同化」も狙いの一つです。このことにより、観測データに直接とらえられていない現象までも再現して、金星の大気循環のしくみに迫ります。