科学衛星運用・データ利用ユニット(通称、C-SODA)は、宇宙科学研究所の衛星・探査機が共通に使用する「地上系システム・設備」の利用サービスの提供、新規サービスの開発等を通して、プロジェクトチームの科学衛星・探査機の運用やデータ処理・アーカイブ・公開を支援することが主な職務です。C-SODAは2008年度に設立された組織で、科学衛星・探査機からユーザにデータが届くまで、地上系システムの全体像の見通しを良くすることで、より効率良く、より信頼性の高い地上系を実現できるようにすることがその設立の理念でした。一口に地上系システムといってもその範囲は多岐に及びますが、衛星・探査機と直接通信する地上のアンテナ(地上局)設備は、JAXA全体の共通設備として追跡ネットワーク技術センターの管轄です。衛星・探査機への/からのコマンド/テレメトリーを各地上局と相模原キャンパスの間で送受信するためのデータ伝送経路の途中から相模原キャンパス側をC-SODAが管轄しており、科学衛星・探査機に共通のものとして、衛星・探査機の管制やミッションデータ処理に必要とされる各種の設備・ソフトウェアを維持・開発・サービス提供しています。

C-SODAが提供する地上系サービスの大きな特徴は、科学衛星・探査機共通に使うことができるように考えられていることにあります。例えば、衛星・探査機の管制ソフトウェアとして、汎用衛星試験運用ソフトウェア(GSTOS: GenericSpacecraft Test and Operations Software)を提供していますが、GSTOSは科学衛星の開発中の試験および運用に共通に使用することを目的として開発され、衛星・搭載機器の違いは、衛星情報ベース(SIB2: Spacecraft Information Base version 2)の内容の置き換えによって吸収できるよう設計されています。現在では、衛星・探査機側がJAXA標準に制定されている科学衛星等通信設計基準テンプレート(SCDHA: StandardCommunication and Data-Handling Architecture)に準拠しさえすれば、SIB 2を適切に整備することで、GSTOSを使って試験や運用を実施できるようになりました。実際、GSTOSが衛星・探査機運用に初めて適用された「ひさき」以降に開発された全ての科学衛星・探査機がGSTOSを利用しています。

また、衛星・探査機から取得されたテレメトリーデータは、全科学衛星・探査機共通のテレメトリー・データベースシステム(SIRIUS)に集約・蓄積されており、ユーザはSIRIUSにアクセスしさえすればテレメトリーデータを参照することができるようになっています。更にエンドユーザが利用可能なレベルに処理されたデータについては、工学値データベース(EDISON: Engineering Database for ISAS SpacecraftOperation Needs)や科学データアーカイブ(DARTS: DataARchives and Transmission System)に蓄積されており、科学衛星・探査機の軌道上状態を解析する衛星・探査機開発メーカーの担当者やミッションデータを利用する研究者などのエンドユーザのデータアクセス先を一元化しています。こうした処理済データは、かつては各プロジェクトで独自のデータフォーマットで提供されていましたが、現在では国際標準フォーマットに従ったデータが用意されるようになってきたことから、ミッションの垣根を越えて横断的に取り扱うことが容易になってきました。また、世界的にはオープンサイエンス化の流れもあります。こうした状況の変化から、エンドユーザへのデータ提供システムも、専門の研究者向けだけではなく、幅広いユーザにもデータが利用されるように改善していくことも検討しています。

C-SODAは共通サービスを企画・提供する部署なので、各科学衛星・探査機プロジェクトチーム、追跡ネットワーク技術センター、深宇宙追跡技術グループ、など、多くの関連部署と常に丁寧な調整をする必要があることから、地上系に関する情報のハブにもなっています。こうした部署としての特性を最大限活かし、プロジェクト横断的な視点をもって、幅広く地上系に関係する専門家の皆さんと協力しながら、地上系の将来を切り開いて行きたいと考えています。運用中・開発中・将来計画を問わず、科学衛星・探査機の地上系システムやデータのアーカイブ化などについて、何かあればお近くのC-SODA関係者にご相談下さい。

C-SODA各種提供サービスのウェブページ

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【 ISASニュース 2023年6月号(No.507) 掲載】