推進系グループ(輸送系分野) (技術リーダ:徳留 真一郎准教授)は、宇宙科学・探査を支える宇宙輸送機の推進系の研究・開発を担っています。その活動には、探査の自在性と頻度を向上させるキックステージの固体推進系、将来の競争力ある宇宙往還機を実現するためのロケットとジェットエンジンを有機的に組み合わせた複合サイクル推進系の実証研究が含まれます。またイプシロンロケットの低環境負荷を実現する将来計画や設計評価にも貢献を続けており、近年は宇宙往還機の高頻度再使用の実現に向けたRV-Xの実証研究にも貢献しています。以上の活動は、ISASにおける宇宙輸送系の中長期目標である「多様な宇宙科学の世界をカバーする軌道間輸送ネットワークを構築する」ことを達成する戦略的な取組みの一環となっています。
推進系グループ(衛星・探査機分野) (技術リーダ:澤井 秀次郎教授)は、推進系の専門技術をもって、プロジェクトやワーキンググループ活動に参加しています。衛星の軌道制御や姿勢制御に用いる衛星推進系(化学推進及び電気推進)の検討の初期段階から機器開発、射場作業、地上運用、軌道運用まで、全てのフェーズに関与、貢献しています。宇宙科学研究所の衛星・探査機の化学推進・電気推進の研究開発に加え、E TS -9のホールスラスタの開発支援や低毒性推進系の研究開発など、他部門と強く連携して活動しています。
熱・流体グループの空力分野(技術リーダ:山田 和彦准教授)は宇宙科学の基盤となる分野です。空力分野では、ロケット、大気圏突入機、惑星航空機など、大気圏内を飛行する飛行体の設計・検証のために、飛行体の周りの流れを理解するための研究を行っています。低速から超高速領域までの様々な速度域の各種風洞試験設備、スーパーコンピューターを利用した流体シミュレーション、大気圏突入時の空力加熱に対する熱防御システム評価装置、大気球や観測ロケットを使った飛行試験など、様々な設備や蓄積された知見・経験を活かし、新しい飛行体を生み出していくことで、宇宙科学の発展に貢献しています。
熱・流体グループの熱分野(技術リーダ:小川 博之教授)は、熱の分野の専門技術をもってプロジェクト等の活動に主体的に貢献しています。またそれらの活動を通じて専門知識や専門技術の向上を図り、同時に、将来の科学ミッションに必要とされる熱に係わる専門技術の研究開発を進めています。ISASの各ミッションの熱制御サブシステムの開発研究に参加している他、先進的な熱制御技術を研究開発しミッションに応用しています。最近では極低温熱制御技術の研究開発に力を入れています。
構造・機構グループ(技術リーダ:峯杉 賢治教授)では、科学衛星・探査機及びロケットの機体全体から搭載機器までの構造・機構を担っています。ミッション要求を実現するためには、構造・機構に関する要求仕様の明確化から始まり、構造・機構様式の選定、荷重条件や機械環境条件の設定、強度・機能試験等々を行う必要があります。更に、近年は、軌道上での温度変動や微小擾乱に対して高精度で形状や指向方向を維持できることや、水星近傍の高温環境や液体ヘリウムによる極低温環境においても所定の機能を有すること、粉塵が舞い上がってもサンプル搬送ができることなど、ミッションの高度化に伴い、構造・機構に対する要求も厳しくなっています。本グループは専門的な知識と技術を礎として、一般的な技術課題の解決から挑戦的な構造・機構の実現までを熱や材料等のグループと協働して取り組み、プロジェクトを支えています。
材料グループ(技術リーダ:後藤 健准教授)では、探査機・衛星の構造重量の一層の軽減が求められており、複合材料やセラミックス、といった高強度軽量材料や形状記憶合金といった機能材料の宇宙機への適用に向けた研究開発を進めています。また、探査機や衛星の開発時に生じる様々な不具合事象に対応し、解決に導いています。最近ではサンドイッチパネルの接着工程不良、CFRP構造体の遅れ破壊、セラミックス鏡の表面精度不良、太陽電池パドルの熱サイクル試験の温度範囲逸脱、固体ロケットモータの長期保管後の使用時の課題などに対応しています。グループのメンバーはそれぞれ金属、セラミックス、複合材料、高分子材料と幅広い分野の専門知識を有しています。
(小川 博之)
基盤技術領域では、相模原キャンパス北西に位置する構造機能試験棟・飛翔体環境試験棟での試験技術・設備開発/運用や清浄度技術開発を活かした試験棟開発・運用・改修、各プロジェクトへの試験・計測技術支援で宇宙科学ミッションを支えている技術組織です。
旧基盤技術グループでは、研究系教育職と一般職技術職員で構成された系統別での試験設備の裁量運用で、かつての宇宙研プロジェクトでは機能しやすい運用システムでした。しかし、近年の多様化したプロジェクトや技術のフロントローディング推進の中で、宇宙科学ミッションを支える技術組織として機能させる為には従前の運用システムの改革が必要と判断し、宇宙機組立試験設備運用システム改革を実施しました(試験棟の総合的な一元化管理運用:専門・基盤技術グループ 伊藤 文成・荒川 聡、科学推進部 立川 誉治、青柳 孝*で活動、2021年10月理事長賞受賞)。また、メンバーは観測ロケット・再使用ロケット(RV-X)・衛星開発などの実験技術支援(内之浦・能代・相模原・あきる野等)でJAXAプロジェクトを横断的に支えています。
今後も基盤技術領域では、第一・第二技術領域や研究開発部門と連携して、開かれた宇宙機組立試験設備・試験棟を継続発展させ、JAXA横断的な研究開発体制の構築と低コスト化に貢献して行く計画です。
(伊藤 文成)
【 ISASニュース 2022年4月号(No.493) 掲載】