●「人と人とを繋ぐインターフェース係」
追跡I/F・射場I/F担当 牧 謙一郎
インターフェース(以下、I/F)とは、「インター=〜と〜の間」「フェース=顔」、つまり直訳すると人と人が向かい合って話しをする、という意味ですが、用語として使われるのは、異なる機器やシステム間のやり取りを意味します。私は、「あらせ」が打ち上げられる2年前から2つのI/F係を担当しました。
「あらせ」と通信を行う「追跡管制」のI/F
追跡管制とは、衛星打上げ後に地上の大きなアンテナを衛星に向け続けて、電波を使って通信を行うことです。これを専門とする部署とのやりとりの中で、衛星側の要望を整理して追跡側に伝えたり、逆に追跡側からの回答を衛星側に周知させたりするなど、2つの組織の間をつなぐ役をしました。
発射場での連絡窓口「射場I/F」
「あらせ」が内之浦の発射場(射場)で準備を行っていた際、ロケット、射場安全・設備、品質管理、企画など様々な班との事前調整が必要でした。私は、打上げの1カ月前から射場でこれらの班と衛星班との連絡窓口を担当しました。
とにかく沢山の人と仕事に出会う
これがこの仕事の特徴です。追跡管制に関わるシステムだけでも10種類以上あり、その分だけ衛星側とのI/Fが存在します。また、射場では、ロケット内部の空調から、作業者の駐車スペースの配分に至るまで、本当に多種多様なI/F業務を次から次へとこなす日々でした。多くの方々と知り合い、名前を覚え、専門家たちの真剣な姿勢に接することに喜びを感じるとともに、大変勉強になりました。
私が「あらせ」の仕事をする前は、個人または少人数で行う研究の仕事が多かったのですが、このような仕事はとても新鮮でやりがいがあり、また衛星プロジェクトの業務を担当したいな、と思わせてくれる2年間でした。
(牧から仁田 工美さんへ)
私と出身大学院が同じ「同志」の仁田さん。ファンクションサブマネージャとして担当されていた様々な仕事についてお話しいただきたいです。
●「衛星開発の機能の一部として」
ファンクションサブマネージャ 仁田 工美
ファンクションとは、ある機能を指すようです。はじめの1年余りはプロジェクト全般を見ることに苦慮し、自分の力不足を痛感し、後半は、私がプロジェクト業務において果たすべき機能とは何か、どうしたら役に立てるのかを問い続ける3年余りとなりました。
ERGが2012年8月にプロジェクト移行が認められた直後の10月に出た青天の霹靂の辞令で、調布から相模原にやってきました。科学衛星がどのように開発されていくのか、手探り状態の日々が始まりました。
つくばの利用衛星開発では、材料選定からPDR(基本設計確認会)、CDR(詳細設計確認会)に参加し、研究部門目線で関わっていました。相模原に赴任して小鳥との会話に慣れてきた頃、工作室で「つくばの衛星は文書でできている、相模原の衛星は会議でできている、調布のプロジェクトは論文でできている」と総括された方がいました。つくば→調布→相模原と渡り歩いてきた私には腑に落ちる名言でした。
皆さんの頭にある状況を会議でつまびらかにして、衛星開発を進めていくという仕事のやり方に慣れる間もなく、ERGの計画変更を経て、プロジェクト全般の仕事を見るサブマネージャから、各「機能」が有効に働くよう調整をする「ファンクションサブマネージャ」に職務が変更になりました。プロジェクト全体を見る仕事への責任はずっと軽くなり、安全や輸出管理、不具合対応など、衛星開発そのものというよりは、それに付随し、かつ、抜け落ちてはならない個別機能への対応が主になりました。その際、帯電・放電、材料劣化とデブリ防護という今まで携わってきた研究が大変役に立ち、つくばや調布、相模原で培ったJAXA内外の人脈に助けられました。一方、新たになった開発体制の下、マネージャとしての業務を初心に帰って一から学び直し、個別機能業務に併せて、結果としては、衛星開発すべてを見渡すことができるようになりました。
「あらせ」は無事に定常運用に移行し、科学成果が出始めています。微力ながら私自身も何とかチームの一員としてここまでたどり着くことができました。長いような短いような私の4年半も穏やかに終わろうとしています。
(仁田から福田 盛介さんへ)
マネージャの経験豊富な福田さん、私よりずっとお若いのに言葉にも重みがありました。「ひさき」の経験を生かしてERGさらにSLIMへと衛星開発におけるご自身の立ち位置の変化と、根幹とされている変わらないことをお話しいただきたいです。
【 ISASニュース 2017年4月号(No.433) 掲載】