2022年5月号から始まった連載も遂に最終回です。そこで今回は、打上げ直前に種子島で行う射場作業や、相模原で行う運用準備について紹介します。
まず、種子島宇宙センターでの射場作業です。
2023年3月に衛星は、筑波宇宙センターから種子島宇宙センターへ搬入されました。種子島に到着してからも、気の抜けない重要な作業が続きます。衛星は第2衛星組立棟(STA2)、衛星フェアリング組立棟(SFA)と場所変えながら様々な試験や作業を行いました。現在は大型ロケット組立棟(VAB)にて、衛星はフェアリングに格納された状態で、打上げに向けた最終的な作業が進んでいます。(射場作業の詳細は、2023年5月号及び8月号の"ISAS事情"をご覧下さい。)
また、7月21日には、メディアの方にXRISM実機を間近で取材して頂く"機体公開"の機会を設けさせて頂きました(2023年8月号表紙参照)。種子島で行う機体公開は、打上げ前の重要なイベントです。この日のためにプロジェクトでは、プレスキットや発表資料の作成などの準備を行ってきました。ご参加頂いたメディアの方々に報道頂いたことで、それを通じて多くの方々にXRISMについて興味を持って頂けたのではないかと思います。
続いて、相模原キャンパスでの運用準備を紹介します。
安全で確実な運用に向け、運用に必要な文書の整備や追跡管制隊の運用訓練をこれまで積み重ねてきました(本連載第10回(2023年3月号)もご参照ください)。その総仕上げとして、実際の運用タイムラインに従いリアルタイム形式で運用模擬を行う"運用リハーサル"を繰り返し実施しました。そして、7月下旬に迎えた最後の運用訓練。これで予定した全ての運用訓練・リハーサルを完了しました。一連の活動を経て運用練度の向上を達成しましたが、その後も打上げに向けて、各自更なる準備を整えているところです。体調管理もしっかり行い、運用訓練の成果を確実に発揮できるよう、万全の状態で打上げに臨みたいと思います。
最後に、XRISM開発中はいろいろな出来事がありました。その様な中、JAXA、メーカー、大学関係者、海外機関等が力を合わせ、チーム一丸となって一つ一つ乗り越えてきました。機体公開の際、メディアの方から"打上げに向けての意気込み"について質問がありました。「様々な困難を乗り越え、ようやくここまでたどり着いた。確実に打上げて運用し、衛星が地上試験の通りに動作すれば、必ず良い成果につながると確信している。」(前島PM)、「国内外の研究者から"XRISMを使ってこんなサイエンスをする予定だ"という声が続々上がっており、非常にやる気に満ち溢れていると感じる。ぜひ、その世界の期待に応えたい。」(田代PI)、と応じたこの2人の想いはXRISMの開発に関わった全員の想いでもあります。世界中の研究者の想いと、その成果を楽しみに待っている方々の想いにしっかり応えるべく、打上げ後もチーム一丸となって確実な運用を目指します。
いよいよ打上げです。銀河を吹き渡る風を見るXRISM(くりずむ)が切り開く新たなサイエンスの地平を楽しみに待っていてください。引き続き応援よろしくお願いします。
【 ISASニュース 2023年8月号(No.509) 掲載】