XRISMは、かつてない精密な分光能力という、画期的な性能で宇宙X線を観測するミッションです。その性能を発揮しサイエンス成果を最大化するためにも、世界中の先端研究者から最高の観測提案を集めて、最も良い観測提案を選び、そのサイエンスを獲得するために最も良い天体を最も良い方法で観測することが重要です。このため、打上げ直後から観測提案を公募し、その中から厳選された観測が、打上げの約10ヶ月後から始まります。観測データは1年間提案者に独占的にアクセス権がありますが、それ以後は世界に公開され、誰でも解析できるようになります。こうすることで、余すところなくデータから科学的価値を引き出すことができるのです。X線天文衛星ではこのように「みんなが提案できること、使えること」が重要です。

ユーザーサポートチームの役割

科学運用チームの中に組織されているユーザーサポートチームは、名古屋大学、芝浦工業大学、埼玉大学、宇宙科学研究所、そして日本福祉大のメンバーで構成され、こうした観測希望者と公開データの解析者、すなわちXRISMユーザーの研究をサポートするもので、主に3つのタスクがあります。

1つめは、観測希望者にXRISMの特徴や、搭載観測装置の性能の高さとその限界を正しく伝えることです。衛星の基本性能をまとめた「クイックレファレンス」がすでに公開されており、さらに観測を1年に一度公募するときに、Proposers'Observatory Guide と呼ばれる詳細なドキュメントを提示し、提案者がXRISMを正しく理解し、提案前に観測精度が十分かをシミュレーションで検証して、最適な観測提案をできるようにします。これには、各検出器や衛星運用上の特徴、明るい天体を観測するときに考慮すべきことなど、多くの注意事項があります。観測はしたけど「目的を果たせないデータ」になってしまわないよう、正確でわかりやすく、かつ詳細なしっかりとした情報提供が欠かせません。

2つめは、XRISMのデータ解析の仕方を伝えることです。こちらも解析ソフトウェアの正しい使い方を日米のXRISMチームから世界に提供しますが、データを解析する上でよくある落とし穴の共有、データ解析の精度を一段と向上させるための新しい工夫の共有などが重要です。これらの一部はサイエンス論文の中に記述されるためこれを明示・共有したり、XRISMのウェブページで公開したりします。XRISMに詳しくないユーザーが公開データを解析するときには、この情報が一番大事と言えます。また観測提案執筆とデータ解析のための、ヘルプデスク機能も提供します。

3つめは世界の科学者や宇宙物理に興味のある皆さんに、XRISMの成果を提示することです。一般の方への情報提供は記者会見や一般向けのウェブページでもされますが、科学に興味がある方々への成果の提示としては、何よりも論文と学会発表であり、そのリストをまとめることが重要です。XRISMの観測が重要な役割を果たした先端科学成果を取りまとめることで、新しい発見を共有し、さらに次の観測公募の時に、より優れた観測提案をするアイデアの元となります。

結びに

今この記事を読んでいるみなさんも、マニュアルを読んで理解すれば、公開データと解析ソフトをダウンロードしてXRISMデータを解析できます。宇宙物理を勉強すれば学会発表だってできるでしょう。さらに知見を深めて、XRISMの観測提案を通し、自分の提案した観測を実現して自分が最初に発見するサイエンスを得られるかもしれません。来たれXRISMの観測希望者!

図1

XRISM ユーザーサポートページのトップ。

図2

ユーザーからの質問を受け付けるためのHelp Desk ページ(開発中)。

【 ISASニュース 2023年2月号(No.503) 掲載】