運用終了惑星分光観測衛星「ひさき」

極端紫外線分光器を搭載した、世界初の惑星観測用の宇宙望遠鏡。金星や火星といった地球型惑星の大気と太陽風の相互作用を調べ、木星の衛星イオから流出するプラズマを観測することにより、初期の太陽系環境や、木星プラズマのエネルギー源を調べる。

超小型深宇宙探査機 PROCYON 月周回衛星「かぐや」(SELENE)

金星と地球は双子惑星と呼ばれることがありますが、これに火星を加えた太陽系に存在する3つの地球型惑星は、太陽系初期に非常に近い環境を持っていたことが最近判ってきています。しかし太陽系が誕生した後10億年以内の期間に、兄弟ともいえる3惑星は現在の状態に近い姿にそれぞれ成長・変貌しました。金星では水が宇宙空間に逃げ出した結果、二酸化炭素を中心としたとても乾いた大気になり、その強い温室化効果により地表面の温度が400℃にも達する灼熱の世界となっています。一方火星は温室化効果を生み出す大気中の炭素成分の多くが宇宙空間に逃げ出してしまい、現在では寒冷な世界になっています。

「ひさき(SPRINT-A)」では、これら地球型惑星の大気が宇宙空間に逃げ出すメカニズムを調べます。特に太陽系誕生直後には、太陽が現在よりも激しく活動していたため、非常に強い太陽風が惑星に到達していて、多量の大気が逃げ出していたと考えられています。強い太陽風が惑星の大気にどのように作用するかを調べることで、初期の太陽系で何が起こっていたかを知ることを目指しています。

さらに「ひさき(SPRINT-A)」は極端紫外線の観測能力を活かして、木星の衛星イオから流出する硫黄イオンを中心としたプラズマ領域の観測を行い、木星のプラズマ環境のエネルギーがどのように供給されているかを調べます。

機体データ

名称(打上げ前) ひさき(SPRINT-A)
国際標識番号 2013-049A
開発の目的と役割 EUV(極端紫外線)分光器によるイオトーラスの観測、惑星外圏大気と太陽風の相互作用の観測を行う
打上げ日時 2013年9月14日 14時00分
場所 内之浦宇宙空間観測所
ロケット イプシロンロケット試験機
質量 348kg
軌道高度 近地点950km 遠地点1150km
軌道傾斜角 31度
軌道種類 楕円軌道
軌道周期 約106分
主要ミッション機器 EUV(極端紫外線)分光器