欧州宇宙機関(ESA)の二重小惑星探査計画Hera探査機に搭載された、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した(製造は明星電気株式会社)熱赤外カメラ(TIRI)は、2024年10月10日から16日まで初期チェックアウト運用を行い、正常に動作することが確認されました。
初期チェックアウト運用期間中の10月10日から15日まで、TIRIは離れ行く地球と月を断続的に観測することに成功いたしました。Hera探査機は月の公転面を斜めに見下ろす角度から観測しており、地球とHera探査機の距離は約140万kmから約380万kmに遠ざかっています。この間に、月は地球から見たときの半月から満月に向かって、地球のまわりを公転していることがわかります。
Hera探査機はこのあと2025年3月の火星スイングバイを経て、2026年12月にディディモスとディモルフォスの二重小惑星系に到着し、約半年間にわたって観測を行います。DART衝突後の状態を調査して軌道修正の効率を求めたり、天体衝突・破壊を繰り返す惑星形成過程の解明につながる研究を進めて行きます。
TIRIは、両小惑星の熱画像を取得して温度計測を行い、全球の表層物質の空隙・粒径分布を推定します。また、フィルタを用いた分光撮像を行って、表面物質の組成の把握を行います。さらに、小惑星の夜側も観測可能である利点を活かし、正確な形状推定と自転・公転運動の計測を行って、プラネタリーディフェンスに貢献します。TIRIの今後の成果にご期待ください。
TIRI開発、Hera探査機打上げや運用にご協力頂きました関係者の皆様に深く御礼申し上げます。