動画 FOXSI-3の打ち上げから回収までの様子 (© FOXSI-3 team)

観測ロケットFOXSI-3が、太陽からの軟X線を新たな手法で観測しました。光の粒1個1個のエネルギー、到達時刻、太陽のどの場所から放射されたかを記録したのです。このデータを基にした研究により、太陽コロナについて新たな知見が得られると大いに期待されます。

太陽は、高温のコロナに包まれています。コロナからの主な電磁波はX線なので、コロナで起きる現象を理解するにはX線による観測が不可欠です。しかしX線は地球大気によって吸収されます。X線観測のためには、大気の外に飛び出すことが必要です。

国立天文台の成影典之(なるかげ のりゆき)助教と、名古屋大学の石川真之介(いしかわ しんのすけ)研究員は、東京大学Kavli IPMUや宇宙航空研究開発機構 (JAXA)宇宙科学研究所の研究者らと共同で、軟X線用の高速度カメラを開発しました。そしてこのカメラを日米共同・太陽観測ロケット実験FOXSI-3に搭載し、2018年9月7日に打ち上げて、6分間の大気圏外飛行中に太陽を観測しました。

このカメラは、入射X線の粒子を1個ずつ、そのエネルギーと到達時刻、太陽のどの場所から放射されたかを記録するように設計されました。この形での軟X線観測は世界初の試みです。得られたデータを解析することで、太陽のさまざまなふるまいを知ることができます。たとえば、X線粒子が放射された場所をひとつひとつプロットすると、点描画と同じ形で太陽コロナの全面像が得られます。到達時刻別に分けると時間変化が、エネルギー別に分けるとスペクトルがわかります。これらの解析は始まったばかりで、今後の科学的成果が大いに期待されるところです。

詳細は、国立天文台・ひので科学プロジェクトをご覧下さい。

図1

図1 FOXSI-3 で取得した世界初の軟X線集光撮像分光データの一例。FOXSI-3に搭載したCMOS検出器は、1秒間に250枚(1枚あたり4ミリ秒)のデータを約6分間取得した。図(a)は実際に取得したデータであるが、白い点1つ1つが1個のX光子で、検出された信号の強度がX線のもつエネルギーに比例する。つまり、このデータからX線光子1個1個のもつ位置・時間・エネルギー情報を得ることが出来る。こうして計測した光子を空間上に配置すると、X線の太陽画像が作れる(図(b);この領域を観測した約2分間のうちに取得した約150万個のX線光子で作った)。また、領域毎に「X線の時間変化を調べたり(図(c))」、「エネルギースペクトルを求めたりすること(図(d))」が出来る。図(c)、(d)は、活動領域(図(b)の四角で囲った領域)に対して作ったプロット。プロット中の灰色のバーは1σの統計誤差を示す。(※図1の光子数は、検出器が検出した光子の数なので、太陽が放っている光子数を求めるには、観測装置の検出効率を考慮する必要がある。)(© FOXSI-3 team)

図2

図2 観測中に検出した軟X線光子全てを使って作った太陽コロナ全面画像。点描の様に太陽の画が描ける。(© FOXSI-3 team)

図3

図3 FOXSI-3の軟X線観測装置。詳細は https://hinode.nao.ac.jp/news/topics/foxsi-3/ をご覧下さい。(© FOXSI-3 team)

FOXSI-3 チームメンバー

成影典之 (国立天文台)、石川真之介 (名古屋大学)、高橋忠幸、古川健人 (東京大学 Kavli IPMU)、渡辺伸 (ISAS/JAXA)、萩野浩一 (東京理科大学)、三石郁之 (名古屋大学)、L. Glesener、P. S. Athiray、S. Musset、J. Vievering、L. Davis (ミネソタ大学)、S. Courtade、J. C. Buitrago-Casas、G. Dalton、P. Turin、Z. Turin (カリフォルニア大学バークレー校)、D. Ryan、S. Christe (NASAゴダード宇宙飛行センター)、S. Bongiorno、B. Ramsey (NASAマーシャル宇宙飛行センター)、S. Krucker (カリフォルニア大学バークレー校)

FOXSI-3 共同研究機関

国立天文台、東京大学Kavli IPMU、名古屋大学、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 宇宙科学研究所、東京理科大学、ミネソタ大学、カリフォルニア大学バークレー校、アメリカ航空宇宙局 (NASA) ゴダード宇宙飛行センター、アメリカ航空宇宙局 (NASA) マーシャル宇宙飛行センター

FOXSI についての関連リンク

FOXSI-3 打ち上げ成功のwebリリース:https://hinode.nao.ac.jp/news/topics/foxsi-3/
ミネソタ大学(英語):http://foxsi.umn.edu/
カリフォルニア大学バークレー校(英語):http://foxsi.ssl.berkeley.edu/
NASA(英語):https://www.nasa.gov/feature/goddard/2018/nasa-funded-rocket-to-view-sun-with-x-ray-vision
FOXSI-3 twitter(英語):https://twitter.com/foxsirocket3
FOXSI-2の成果(日本語):http://www.isas.jaxa.jp/topics/001146.html

本研究は、JSPS科研費 JP18H03724(基盤研究(A)、研究代表者:成影典之), JP17H04832(若手研究(A)、研究代表者:石川真之介), JP16H02170(基盤研究(A)、研究代表者:高橋忠幸), JP16H03966(基盤研究(B)、研究代表者:渡辺伸), JP15H03647(基盤研究(B)、研究代表者:成影典之), JP24244021(基盤研究(A)、研究代表者:高橋忠幸), JP21540251(基盤研究(C)、研究代表者:成影典之), JP20244017(基盤研究(A)、研究代表者:高橋忠幸)の助成を受けたものです。(助成開始年度で降順に記載)

また、観測ロケット実験FOXSI-3は、NASA LCAS grant NNX16AL60Gの助成を受けたものです。