IKAROS加速度部会は、IKAROSのアストロダイナミクス(宇宙航行力学)に関する研究を議論する場です。この加速度部会では、IKAROSのメインミッションである「ソーラーセイルによる加速」と「ソーラーセイルによる航行技術の獲得」に関する活発な議論が行われていました。世界初のソーラーセイルであるIKAROSで、どのようにすれば正確にソーラーセイルの加速度を求めることができるのか、どのような航法誘導を行えば将来の宇宙探査に活かすことができるのか、貴重な軌道上実証の機会に成果を最大化するためさまざまな提案が行われました。その結果、精密なソーラーセイルの加速度推定だけでなく、ソーラーセイルを打ち上げて初めて分かった運動が解明され、大きな成果を挙げることができました(「IKAROSの姿勢系・航法誘導技術」参照)。

このIKAROS加速度部会は、JAXAのスタッフや大学の先生方だけではなく、学生にも広く門戸が開かれていました。私は、宇宙機の軌道工学に関する研究を行うために、2007年から2012年まで博士課程の学生として相模原キャンパスに在籍していました。そのため、IKAROSの打上げ前から後期運用まで、IKAROSプロジェクトの最も面白い期間に携わることができました。特に、セイルの展開を開始した2010年6月3日には、世界中のアストロダイナミクス関連の研究者がうらやむソーラーセイルのフライトデータに、いち早く触れることができました。これらを通じて、宇宙探査における目標設定、その目標を達成するための開発、そして運用を通じてデータを取得し、その目標を達成する、という一連の流れを学ぶことができました。10年に1回ともいわれる深宇宙探査機の運用期間に、相模原で研究できたことは非常に幸運だったと思います(2010年は、IKAROSの打上げに加え、「あかつき」の打上げ、「はやぶさ」の地球帰還もありました)。もちろん私だけではなく、多くの学生がこの加速度部会に参加していました。現在もIKAROSのフライトデータは貴重なソーラーセイルの実データとして、多くの学生の研究に使用されています。

ちなみにIKAROS加速度部会は、ときおりIKAROS"過食度"部会と名を変えて活動しています(現在進行形)。この分科会は、焼肉食べ放題の現地調査を主目的としています。開催日の翌日は、十中八九、胃の調子が悪くなるため、その後の予定を十分に吟味した上、覚悟を決めて挑む必要があります......。

(やまぐち・ともひろ)