修士論文発表が終わったころに何となく参加したその定例会議は、長時間会議が敬遠されるこのご時世において、7時間を超えるものでした。私が参加する前にはさらに長いときもあった、という恐るべき会議です。

それが、IKAROSのセイルの収納・展開方式について検討する「構造系専門部会(構造部会)」の会議でした。宇宙研以外からも構造系の先生方、そしてその研究室の大学院生たちも集めて行われ、毎回、白熱の議論がなかなか収束しない展開となりました。

このような議論の"燃料"である解析や実験の結果を供給するのが、当時の私たち学生の立ち位置でした。通常の研究室のゼミとは異なり、この結果がプロジェクトの進行を左右するかもしれないという緊張の中で議論のやり玉に挙げられるのは、とても刺激的な体験でした。プロジェクト開発の生の現場に触れながら研究できる、宇宙研の学生の醍醐味といえるでしょう。

IKAROS、そして構造部会にとって一つの山場は、セイルを最終的に展開する2次展開実行コマンドをIKAROSに送る直前の4日間にあったと思います。実は、セイルを展開する最終準備を進める中で、その挙動に予想外の現象が見られ、このまま進行すると展開に不具合が発生するのではという懸念が出たのです。

この期に及んで実験か......と思いつつも急きょ週末に集合し、IKAROSのセイル試験モデルを使った検証実験を実施。さらに解析結果や運用フローチャートもそろえ、展開前の最後の"燃料"を投下しました。その燃料をもとに連日開催された臨時構造部会で慎重に議論した結果、ようやくセイル展開再開の結論に収束し、2010年6月9日の2次展開実行コマンド送信にこぎ着けたのです。

展開成功を確認した後に撮った部会メンバーの集合写真は、連日の長時間会議の疲れにもかかわらず、みんな満面の笑みで写っています。世間では忌避される長時間会議も、各人の論点を整理し、IKAROSプロジェクトを前に進め成功に導くためには必須の、重要な儀式だったのかもしれません。

(しらさわ・ようじ)