IKAROSの材料部会というのは、セイルを製作するに当たって組織された部会です。セイル材料であるポリイミドの専門家の先生や、セイル上に搭載されている複数のデバイスの担当者、および学生で構成されていました。学生の役割は、セイルの巻き付けやセイルに搭載するデバイスの要素試験の実施など、多岐にわたっていました。私は、(メーカーさんの協力のもと)セイル全体のインテグレート(統合)とスケジュール管理の補佐役を任されていました。もちろん担当の職員さんがいらっしゃったのですが、ご多忙だったこともあって、かなりの部分を任せていただき、学生でありながら実プロジェクトの中での立ち回りなど、大変勉強させていただきました。

ただ、それだけに大変苦しい学生時代を送ったのも事実です。本分が学生である以上、自身のテーマの研究は必ずやらなければならないわけですが、実プロジェクトに組み込まれると、もはやそれどころではありません。スケジュール管理や調整といったことを手始めに、セイルのインテグレートの中で起こるさまざまな問題を解決するため、とにかく奔走する毎日でした。そういった形で、福島県にあるメーカー工場と宇宙研を行き来する日々の合間に、何とか並行して自身の研究を進めるよう努めていました。今思うと、このときの経験があったからこそ、今の自分がいるように思います。あのとき、苦しいながらも走り続け複数のことを同時に進めていた経験が、現在の複数のプロジェクトの中で仕事を進めていくスキルの礎となったのかもしれません。そして、いつも何かに追われて死にかけているスタイルも、このとき身に付いてしまった負の遺産なのでしょう......。

(みます・ゆうや)