X線突発天体の即時観測計画OHMAN (On-orbit Hookup of MAXI and NICER、オーマン)を2022年8月10日に開始し、9月13日に最初の連携観測に成功しました。OHMANは、ISS上に搭載されているJAXA の全天X線監視装置「MAXI」とNASAの高精度X線望遠鏡「NICER」を連携し、いつどこで起こるかわからないX線爆発現象をMAXIで捉えてNICERが自律的に即時追観測するプロジェクトです。軌道上で自動運用することで、これまで3時間以上かかっていた地上経由の追観測に対して、10分程度で開始することが可能となり、爆発から1時間以内に消失してしまう急速減光天体の正体解明に近づくものと考えられます。

OHMANは、日米オープン・プラットフォーム・パートナーシッププログラム(JP-US OP3)の枠組みの支援を受けて実施される国際共同研究ですが、MAXIデータをISS内に設置したコンピュータで解析し、その結果をNICERに送信するソフトウェアの開発は、主に宇宙科学研究所の「小規模計画」によって実施されました。小規模計画は限られた予算で最大の成果を上げるべく行われている公募で、ソフトウェアの工夫のみによって新たな観測装置の開発に匹敵する価値を生み出すOHMANはまさに最適なテーマでした。

OHMANのソフトウェア開発には宇宙科学研究所に所属する研究者・学生も貢献しました。ISSラップトップで動作させるソフトウェアの全体設計および通信処理モジュールの開発は科学衛星運用・データ利用ユニット中平聡志主任研究開発員が過去に実施したもので、Windows7用に構築されたソフトウェアのWindows10 OS対応化等の改修が、同主任研究開発員、宇宙物理学研究系 海老沢研教授と大学院生の長塚知樹(東京大学大学院理学系研究科)らによって実施され、ISS軌道上での運用開始に大きく貢献しました。

またMAXIの観測データアーカイブは宇宙科学研究所のDARTS (https://darts.isas.jaxa.jp/) から公開されています。速報性を活かすためMAXIが観測したデータは、観測から10分程度で公開データとして追加・更新されるので、世界中の研究者がDARTSから公開されるデータを利用してMAXIが発見した突発天体現象の検証・詳細解析を行うことができます。