運用終了赤外線天文衛星「あかり」

天体からの赤外線を観測することで、銀河の形成と進化過程を解明し、星の形成またその周りでの惑星形成過程を解明することを目的とした日本で初めての赤外線天文衛星。これまでの赤外線画像よりはるかに高い解像度での観測に成功している。

月周回衛星「かぐや」(SELENE) X線天文衛星「すざく」

「あかり(ASTRO-F)」は、天体からの赤外線を観測する日本で初めての衛星です。
「あかり」は最近の赤外線検出器技術の進歩に基づいて、IRAS衛星(下記注)の数倍から数十倍高い感度・解像度での赤外線サーベイを行いました。2006年5月には、これまでの赤外線画像よりはるかに高い解像度での観測に成功し、星が生まれている現場を正確にとらえた初観測画像など、最初の成果を発表しました。電力・姿勢とも安定し、正常に観測を実施して、2007年8月に液体ヘリウムを使い切った後も、近赤外線観測装置で観測を継続しました。
2011年5月24日に発生した電力異常を受けて、6月に科学観測を終了し、以降は、確実な停波に向けた運用を実施し、2011年11月24日電波発信停止作業を行い、5年9ヶ月にわたる運用を終了しました。

機体データ

名称(打上げ前) あかり(ASTRO-F)
国際標識番号 2006-005A
開発の目的と役割 ・銀河の進化を探るため、高感度の赤外線観測によって原始銀河を探索する
・星の誕生の謎を調べるため、様々な星生成領域を赤外線で観測する
・星の進化や宇宙の中での物質の循環を調べる
・太陽系外の原始惑星系円盤からの放射を探査する
・新彗星を発見する
打上げ日時 2006年2月22日 6時28分
場所 内之浦宇宙空間観測所
ロケット M-Vロケット8号機
質量 952kg
形状 1.9×1.9×3.2m
太陽電池パドルの端から端まで5.5m
軌道高度 700km
軌道傾斜角 98.2度
軌道種類 円軌道(太陽同期)
軌道周期 100分
主要ミッション機器 口径68.5cmのリッチー・クレチアン式反射望遠鏡
望遠鏡の焦点面に、遠赤外線を観測するFIS(Far-Infrared Surveyor)と、近・中間赤外線カメラIRC(InfraRed Camera)の2種類の観測装置を搭載
観測装置の冷却のため、液体ヘリウムおよびスターリングサイクル機械式冷凍機を搭載
運用停止日 2011年11月24日
運用 打上げ後の機能確認作業において、2次元太陽センサ(NSAS)等に想定と異なる挙動が見られたため運用手順を慎重に検討し、安全に姿勢制御を行うための衛星搭載ソフトフェアの改修と動作確認試験を完了した後の、2006年4月16日16時55分(日本標準時)に観測器機能望遠鏡の蓋開け(アパーチャーリッドの開放)を行い、正常に実施されたことを衛星からのテレメトリ信号により確認した。
その後は電力・姿勢とも安定しており、観測も正常に行われ、2007年8月に液体ヘリウムを使い切った後も、近赤外線観測装置で観測を継続した。
2011年5月24日に発生した電力異常を受けて、6月に科学観測を終了し、以降は、確実な停波に向けた運用を実施し、2011年11月24日電波発信停止作業を行い、5年9ヶ月にわたる運用を終了した。
観測成果 2006年5月には、これまでの赤外線画像よりはるかに高い解像度での観測に成功し、星が生まれている現場を正確にとらえた初観測画像など、最初の成果を発表した。2007年3月には、「あかり」の観測から得られた初めての科学的成果が、日本天文学会春季年会で発表された。
2007年10月、日本天文学会欧文報告誌(PASJ)の「あかり」初期成果特集号が発行された。