世界最大級の宇宙イベント「第76回国際宇宙会議(IAC 2025)」が、9月29日(月)から10月3日(金)まで、シドニーの国際会議場(ICC Sydney)で開催された。期間中は基調講演や技術セッション、ポスター展示、学生プログラムが行われ、世界最先端の研究成果と新たな国際協力が次々と発表された。ダウンタウンには巨大な宇宙飛行士像も登場し、街全体がIACムードに包まれた。

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シドニーのダウンタウンにはIAC開催に合わせて巨大な宇宙飛行士のオブジェが飾られ、多くの人が写真を撮っていた。

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IAC2025の舞台、ICCシドニーの全景。特徴的な屋根と開放的なフォアコートが印象的。

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ICCシドニー前、ダーリングハーバーの碧い水面に映るシドニーのスカイライン。IAC2025会場の目の前で、街と海が交わる。

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IAC2025会場入口にそびえる、迫力のあるレゴ製ロケット。宇宙へ向かう想像力の入り口は、ここから。

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「火星衛星からサンプルを持ち帰る」。 JAXAブースに展示された2026年度打上予定のMMX探査機の1/20模型を前に、来場者へミッションの見どころを解説。

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背中にMMX。JAXAブースで "MMXマント" を背負い、カプセル回収の地、オーストラリアで火星衛星探査計画MMXを全力PR!この日は広報マン、MMXヒーロー仕様!

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和の心で宇宙を包む。こちらは "前面装備"。MMXを和のテイストでデザインした風呂敷で訴求力アップ!MMXを前からもしっかりアピール。

一歩ずつ。また一つ、ESAとJAXAの国際協力が前進

9月30日には、ESAとJAXAのイベント「Reception celebrating the growing cooperation on the RAMSES mission」が開かれ、ジョセフ・アッシュバッハーESA長官、ホルガー・クラッグ宇宙安全プログラム責任者、パオロ・マルティーノRAMSESミッション・マネージャー、山川宏JAXA理事長、藤本正樹JAXA/ISAS所長等が登壇。ESA主導のRAMSESがJAXAのH3で、JAXA/ISASのDESTINY+と相乗り打上げをめざすことが発表され、象徴として、相乗り打上げのロゴが披露された。山川理事長と藤本所長は、近地球天体(NEO)脅威への対応=プラネタリーディフェンスの重要性を強調し、技術協力と打上げ機会の検討をさらに進める考えを表明した。

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左から、藤本正樹JAXA/ISAS所長、パオロ・マルティーノRamsesミッション・マネージャー、ホルガー・クラッグ宇宙安全プログラム責任者、山川宏JAXA理事長、ジョセフ・アッシュバッハーESA長官

山川理事長、藤本所長からは、「地球に接近する天体(NEO)による脅威への関心が国際的に高まっており、これに対応する「プラネタリーディフェンス(地球防衛)」の取り組みが活発化してきている。ESAのRAMSES 計画への協力は大事だ。(ESAが主導するRAMSESミッションはNEOである小惑星Apophisをフライバイ観測する) JAXAからは技術提供と打上げ機会の提供の検討をさらに進めていく」とESAとJAXAが強い協力関係にあることが示された。

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RAMSESで広がるESA × JAXAの輪。IAC2025でのイベントに関係者が出席し、国際協力の進展を確認。
左から、ファビオ・ニケレ タイヴァック・インターナショナルCEO(RAMSESに塔載されるキューブサット「Farinella」を開発)、ホルガー・クラッグESA宇宙安全プログラム責任者、パオロ・マルティーノRamsesミッション・マネージャー、藤本正樹 JAXA/ISAS所長、キアラ・ペデルソーリ OHBシステムCEO、山川宏 JAXA理事長、ジョセフ・アッシュバッハーESA長官、テオドロ・ヴァレンテ ASI(イタリア宇宙機関)総裁、マリエラ・グラツィアーノ GMV国際戦略・事業開発エグゼクティブ・ディレクター

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お披露目されたRAMSESとDESTINYの同時打上げロゴを前に、欧州と日本の連携の意義を説明する藤本所長。

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イベント会場では、JAXAのH3ロケットで同時に打ち上げられることが検討されているESAのRAMSES(手前)とJAXA/ISASのDESTINY(奥)が展示された。同時打上げTシャツでPR中。 ESA 50周年ロゴの前で気合十分!

Powerhouse Museumインタビュー

会期中は世界各国のメディアから取材が相次いだ。シドニーのPowerhouse Museum(元発電所を利用した博物館。150年の歴史があり、芸術から科学技術、宇宙まで幅広い展示がある。現在改装中で、2026年にPowerhouse Parramattaが開館予定)も、宇宙分野のリーダーの短編インタビュー企画のため、藤本所長を撮影。所長はメイクも受け、撮影後に「そのままで行こう」と満足げ。

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撮影を前に藤本所長のメイク。気分はすっかり芸能人。インタビュー終了後に、「メイク落としますか?」と聞くと、「変か?」と。「ばっちり決まってます」と言うと、「そのまま行く」。大満足でお気に入りのご様子。

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インタビューを受ける藤本所長。

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カメラ越しにのぞくインタビュー収録。どんなインタビュー映像になるかは現地でのお楽しみ。

インタビューでは、はやぶさ2のサンプルリターン、SLIMのピンポイント着陸、来年打上げ予定のMMX、そして将来の火星圏サンプルリターン構想についても言及。回収地としてのオーストラリアの地理・制度・信頼性を「成功の鍵」と位置づけ、大学や研究機関との連携を含む日豪の継続的パートナーシップの重要性を語った。

宇宙科学探査以外にも話題は広がり、ISSのような低軌道については、アクセス性が高く、本質的な目的に集中しやすい"実験の場"と整理し、宇宙ビジネスが生まれやすい場でもある。アイデア次第で数年以内に試せる環境の意義にも触れた。一方で、月・火星・小天体など深宇宙での活動も強化すべきと強調した。

人柄を問う質問には、「空を見上げる理由の変化」や若い世代へのメッセージとして「チームワークとコミュニケーション」を挙げていた。(答えはぜひシドニーのPowerhouse Museumで確認してもらいたい)

Powerhouse Museum Parramattaは世界でも最大規模の宇宙の展示が予定されている。ぜひ、オーストラリアでも宇宙開発の歴史と未来を感じに訪れてほしい。

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撮影の一コマ。上を向いて、何をしているのか。。。

(2025/10/29)

次回に続く (11/5掲載予定)