私が担当していたXEPはERG(「あらせ」)の電子観測の中で一番高いエネルギーの電子(400keV- 20MeV)を観測する役割をもつ装置です。JAXAに入って初めて経験した長い苦しい衛星開発において、楽しみにしていたシーンが2つありました。1つ目は自分の開発した装置が載ったロケットの打ち上げをみて感動すること。2つ目はXEPが初めて宇宙でONになったとき管制室で大勢の関係者と感動を分かちあうこと。一般の人がJAXA職員に対してとても想像しやすいシーンだと思います。しかし私の場合、現実は全く異なるものでした。1つ目については、内之浦で打ち上げはみることができたものの、実際は感動して涙するどころか、もう直せないということを目の当たりにして緊張がより高まっただけでした。自分の関係する打ち上げは感動できないのだと悟りました。

2つ目に関しては、沢山ある「あらせ」の搭載観測機器のなかでも最後の方だったXEPの初めての立ち上げ運用の時、管制室には私を含めて3名だけというとてもさみしい状況でした。初めてONした時は感動したものの、関係者との想像していた感動のハグや歓喜もなく、高電圧装置を3つ抱えていたXEPは、淡々と長時間にも及ぶ苦行のような昇圧作業を続け、長時間の作業にくたくたになって帰宅、というこれもまた想像と違うものでした。そして、装置が稼働し始めると今度は畳みかけるように取得データの健全性確認の作業に追われました。初めてXEPのデータを図にし、放射線帯がしっかりと確認できた瞬間は、安堵で疲れが一気に吹き飛んだのを鮮明に覚えています。「放射線帯があるのは分かっていて観測できて当たり前。科学的にどんな新しいことが分かったのか」と成果を急がれがちですが、装置開発をする人としては決して当たり前は当たり前ではなく、感動するものだと学びました。また、初めての図をみてプロジェクトサイエンティストの三好先生が一緒に感動し、褒めてくださったことは、XEPにとても自信をもてるきっかけとなる思い出です。XEPが引き続き科学者の皆さんの役に立てば本望です。

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XEPを支えてくれた仲間たち