「あらせ」が健全に科学観測運用を続けられるよう、関係する宇宙研メンバは週の初めに1度、運用実務を担う業者さんを含めた定例会を開いています。その時々に生じている課題を共有し、解決方針を決めるための打ち合わせです。定常観測が始まった頃は課題が沢山あり時間を要しましたが、安定した運用が継続し5年が経過して、発生頻度の低い事象に対しても対応方針が決まった今となっては、短時間で終わることが多くなっています。ただ、この定例会の参加者がそろって出張してしまう時に限って、なんらかの特別な運用が必要な事象がおこります。「あらせ」は少し寂しがりなようです。

さて、「運用定例会」と書くと格式張って聞こえますが、この打ち合わせは自由な議論の場で、しばしば話が脱線します。重要な事項は最初に話し合い、後は少し関係のない話も含めて雑談をすることもあり、意見の出しやすい雰囲気が作られていました。私は衛星バスについて初めはあまり知識がなかったのですが、的外れな質問ができる機会があったおかげで、色々な機能を理解できました。そして、楽で、確実な観測運用を実現していくことができました。

例えば、運用に用いるコマンド群の送信頻度を週2回から1回に減らすことができました。「あらせ」の運用では、衛星位置や様々なタイミングにおける観測を実現するために、コマンドとその実行時刻をペアにしたテーブルのある期間分を地上から衛星に送信し、その間は原則としてそのテーブルに従って観測を実施しています。ただし、このテーブルの大きさには衛星バスのメモリ量による制限があります。衛星の姿勢制御や地上局との通信設定などの他に、9つの観測機器が要するコマンドを1つにまとめてテーブルを作成するのですが、定常運用の初期はこの作業が週2回必要でした。皆さんがコマンド数の削減努力をしたのですが、到底1週間分はメモリに収まりませんでした。ですが、定例会でポッと出た話から、それまで未使用の領域を使ってテーブル自体のサイズを増やせそうだとわかりました。その会話からフットワーク軽く、比較的速やかに、週1回のテーブル送信での観測を始められました。他にも、運用上の少しの工夫が沢山この定例会から生まれました。さすがにそろそろネタ切れですが、この先も「あらせ」のご機嫌を損ねないように定例会は細々と続くことでしょう。